第13話、オーガ退治

 森に住みついたオーガを退治して欲しい。という依頼で、僕とレイはオーガの森へ。

 王国から少し離れた森へ到着した。ここから、龍の森が見える。


「…………」

「どうしたの? 行くわよ」

「あ、ああ」


 龍の森には、黒い雲が渦巻いていた。

 なんで、僕が入った時には雲がなかったのかな。

 オーガの森へ入ると、湿った空気に包まれる……いやな湿気だ。

 レイは、背負った二本の槍を連結させ、双槍へ変える。


「おお、かっこいいな」

「でしょ? アダマンタイト製の『デュアルヴィーナス』よ。連結させなければ双剣に、連結させれば双槍になる、あたしの自慢武器!!……こほん。まぁ、そんなことはいいわ」


 恥ずかしくなったのか、レイはそっぽ向いた。

 耳も赤いが、何も言わない方がいいだろう。


「今度は、あたしの腕を見せるわね」

「ああ。お願いします、先輩」

「うむ。ふふ、気分いいわね」


 レイはご機嫌だ。

 前を向いて歩きだし───……ポツリと言った。


「ロイのこと、ありがとうね」

「……え?」

「あの子が冒険者になって、あたしみたいになりたいって言ってたの……でも、馬鹿だから騙されて」

「………」

「あなたがいてくれて、よかった」

「でも、俺は……俺だけが、助かって」

「違うの。もしあなたがロイのこと知らせてくれなかったら、あたしはロイを探して森に入って、死んだロイを抱きかかえて……ロイを殺したやつを、ブチ殺してたと思う。でも、あなたが証言してくれて、犯人を殴ってくれて……すごくスッキリした」

「……レイ」

「はい、おしまい!! あたしは、ロイの分まで冒険者頑張る!! リュウキ、あなたもね!!」

「ああ。約束する」

「うん!!───……来た」


 レイは一瞬で双槍を回転させ分離、片方を投げた。


『グァァァッ!?』

「命中」


 身体強化を使い、地面を蹴る。

 ポカンとしているリュウキはようやく動く。レイの後を追い、レイが消えた方へ向かう。

 そこには、肩に剣が突き刺さったオーガがいた。


「『引戻しスナッチ』!!」


 剣を構える。すると、剣が引き寄せられた。

 レイは剣を掴み、クルクル回転させて連結。


「『磁力螺旋スパイラル』!!」


 双槍が高速回転し、オーガに向かって飛ぶ。

 そして、複雑な軌道を描き、オーガの頭を綺麗に吹っ飛ばした。


『…………』


 ギョロンとオーガは白目を剥き、ドスンと崩れ落ちた。

 剣は回転しながらレイの元へ。例はキャッチし、連結を解除して背中の鞘に納め、僕に向かって微笑んだ。


「どう?」

「す、すっげぇ……何だ今の? 剣が、回転」

「今のがあたしの『スキル』よ。金属に磁力を付与するユニークスキル、『磁界マグネ』よ」

「すごい……!! 本当に、すごい!!」

「ふふん。まぁね」


 自信満々なレイ。

 さすがB級───……え?


『…………』

「え?」

「───レイ!!」

「なっ」


 死んだはずのオーガが、立ち上がった。

 レイが剣を構えるが、遅かった。


「───っが」


 オーガの拳が、レイに突き刺さる。

 レイはバックステップで衝撃を和らげるが、それでも喰らってしまった。

 地面を転がり、呻く。

 僕が抱き起こすと……腕が折れていた。


「おー、オーガ……ぞ、ゾンビ。あ、アンデット化、ですって?」

「おい、しっかりしろ、おい!!」

「ぅ……に、逃げて」

『ォォ、オオォォ……』


 頭のないオーガが、ゆっくりした動きでこっちへ来た。

 

「……スゥゥ~っ」

「に、逃げな」

『オ、オォォォォッ!!』



 オーガの拳が迫る。

 僕はレイを守るように立つ。

 両手を交差し、全身に『闘気』を纏う。

 

「ふんがっ!!」

「え」


 オーガの拳を交差した両腕で受け止めた。

 そして、腰の剣を抜き全力で抜刀───……オーガの身体が一刀両断。背後の木々もなぎ倒された。

 縦に両断されたオーガは、今度こそ死んだ。

 ドロドロになり、溶けるように消えたのだ。


「ふぅ……勝利」

「う、うそ……」

「さ、怪我の手当てして、帰ろうか」

「……え、ええ」


 オーガ、なかなかの強敵だった……それにしても、ゾンビって何だろう?

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