第二章

第11話、妹のレイ

 ルイさんが紹介してくれた宿屋に泊まった翌日。

 僕は着替えを済ませ、カバンを背負って宿を出た。

 宿の前には、ルイさんがいた。


「おはよう。よく寝れたかい?」

「はい。すごくいい宿でした」

「ははは。じゃあ、朝食を食べながらいろいろ話そうか」


 朝食は、中央広場にある露店。

 ルイさんは野菜と肉のサンドを買い、僕へ渡す。

 ベンチに座り、二人で食べた。


「中央諸国は、小国が集まってできた大きな一つの国。その全ての国を統括するのが、聖王国クロスガルドだ。こことは比べ物にならない大国だよ。きみが目指すのは、クロスガルドにある聖王国魔法学園。この世界最大の育成機関で、ちょうどいま、新入生の募集が始まっている」

「え、そうなんですか?」

「ああ。昨日、いろいろ調べておいた」


 ルイさんは、何枚もの学園案内を僕へ手渡す。


「筆記試験、実技試験の総合得点で合否が決まる。これは過去問、実技試験は魔力操作に関する試験らしいが……詳しくはわからない」

「か、過去問がこんなに」

「ここから中央諸国まで馬車で一か月。ちょうど、聖王国へ行く予定があるんだ」

「え、まさか」

「一緒に行こう。それに……うちからも、試験を受ける子がいてね」

「え?」


 すると、こっちに向かって来る女の子が。


「兄さん、準備できたから」

「ああ。っと、紹介するよ。我が妹のレイだ。冒険者で、今年の聖王国魔法学園試験を受ける」

「…………あなたが、ロイを?」


 どこか、責めるような眼だった。

 僕は立ち上がり、頷く。


「ああ。僕が彼の最後を看取った」

「……そう」


 それだけ言い、レイは行ってしまった。


「すまないね。ロイは、レイに憧れて冒険者になったんだ。ぼくや兄さん、姉さんみたいな商才がなく、レイみたいに生まれながらに『スキル』を持っていた天才でもない。でも……ロイは、レイに憧れていた」

「……」

「リュウキくん。頼みがある……あの子の、友人になってくれないか?」

「俺でよければ」

「……ありがとう」


 レイ、か。

 長い金髪をツインテールにした、どこかきつめの少女。

 プリメラとはずいぶん違うタイプだ。


 ◇◇◇◇◇


 ルイさんが「今日、レイは討伐依頼を受けるようだ」と言っていたので、冒険者ギルドへ。

 出発準備はできたがすぐに出発はしない。ルイさんが最終確認をしてから出発なので、数日後に聖王国クロスガルドへ向けて出発する。

 冒険者ギルドへ行くと……いた。掲示板の前で依頼を見てる。


「レイ、こんにちは」

「……ああ、あなたね」

「リュウキでいい。ところで、依頼を受けるのか?」

「ええ。兄さんの準備ができるまで暇だしね。それに、兄さんは几帳面だから、準備や確認に時間をかけるの。全く……準備はできたって言ったのに」

「あはは。いい兄さんだな」

「ふん。で……あなたも依頼?」

「ああ。あのさ、討伐依頼を受けるつもりなんだけど……一緒にどうだ?」

「……あなた、等級は?」

「えっと、Eだけど」

「あたしはBよ」

「え!?」


 び、B……って、まじ?

 レイは僕と同じくらいの歳なのに、もうB級なのか。


「どうせ、兄さんに何か言われたんでしょ? 仕方ないわね……付き合ってあげる。新人の指導も、高位冒険者の仕事だしね」

「ぐ……お、お願いします」


 レイはクスっと笑った。なんだ……笑えるじゃないか。

 さて、どんな依頼を受けるか。


「あたしがやろうと思ってたのは、このオーガ退治。C冒険者から受けることができるわ。あなたのレベルに合わせると……この、コボルト退治ね」

「コボルト。確か、犬の魔獣か」

「正解。じゃあこうしましょう。コボルト退治を手伝ってあげる。コボルト退治が終わったら解散して、あたしはオーガ退治に行くから」

「……一人で大丈夫なのか?」

「平気よ。あたしは生まれながらの『スキル』持ちだからね」

「…………」

「なに? 驚いて声も出ないのかしら」


 ツインテールを揺らし、得意げに胸を張るレイ。

 うーん……これ、言ったら怒られそうな気がする。


「あのさ、スキルって何だ?」

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