第5話、冒険者
さっそく、冒険者登録をするために冒険者ギルドへ。
城下町の中心にある冒険者ギルド。初めて来たけど、かなり広い。
受付カウンターへ行き、受付の女性に話してみた。
「あの、冒険者になりたいんですけど……」
「はい。冒険者登録ですね? 失礼ですが、お歳はおいくつですか?」
「十五歳です」
「はい。ではこちらの用紙に名前、必要事項を記入してください」
用紙に名前を書き、一瞬止まる。
リュウキ・ドラグレード……もう、ドラグレード性を名乗れない。
名前には『リュウキ』と書いた。
歳、出身地、使用武器……あ。
「……あの」
「はい?」
「その、武器……剣や格闘技を少々使えますけど、その……武器、持ってないんです」
「あら、武器を……というか、装備を持っていないんですか?」
服装は、旅の装いだ。
ズボンにジャケット、戦闘用ではないが、動きやすい。
とりあえず、拳を握った。
「す、素手でも戦えます。大丈夫です」
「……はぁ」
受付さんは、「大丈夫かな……」みたいな目で見てた。
さっさと記入し、受付用紙を渡す。
そして、用紙を確認し『魔導プリンタ』に入れる。すると、プリンタから鉄製のプレートが出てきた。
「こちらがリュウキさんの冒険者プレートになります。魔道具ですのでなくさないように。初回は無料ですが、紛失されますと再発行にお金がかかりますので」
「は、はい」
「こちら、お金も入金できますのでご利用くださいね」
「あ、ありがとうございます」
「冒険者についてのご説明は必要ですか?」
「はい、お願いします」
冒険者。そういえば、詳しく知らない。
受付さんはにっこり笑い、一枚の紙を出した。
「冒険者とは、この世界各地に存在するダンジョンを攻略して財宝を手に入れたり、未開の地に踏み込んで調査、危険な魔獣を狩る人たちの総称です。リュウキさんはまず、冒険者としての下積みから始めましょう」
「下積み……」
「まずは、ギルドからの依頼を受け、冒険者とはどのような職業なのかを知りましょう。そうですね……町の清掃依頼など、危険が少ないのでお勧めですよ。お金を手に入れて装備を整えることから始めてはいかがですか?」
そう、お金。
お金がないとダメだ。装備を手に入れなくては。
「その後、城下町の外で薬草採取をしたり、畑を荒らすゴブリンやコボルトの退治。それからダンジョンへの挑戦……この辺りが一般的な流れですね」
「ダンジョンかぁ……」
「ふふ。リュウキさんはまだE級冒険者ですので、ダンジョンへは挑戦できません」
「あはは……」
等級なんてのもあるのか。
確かに、プレートには「E級」って書かれている。
「説明は以上です。わからないことがあれば、いつでも聞いてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
受付嬢さんにお礼を言い、さそく依頼掲示板へ。
よく見ると、確かにある。
町の清掃、どぶ掃除、草むしり……けっこうあるな。
「依頼金は、銅貨五枚から八枚が殆どか。いくつかパンを買って終わるな……」
金銭で困るなんて初めてだ。
とりあえず、いくつか草むしりの依頼を剥がそうとして───。
「なぁあんた、あんたも登録したばかりか?」
「え?」
一人の少年に、声をかけられた。
皮鎧にロングソードを差した少年だ。そして、シルバーの鎧に槍を持った男性もいる。
シルバーの男性が「よ」と声をかけてきた。
「お前さん、新人だろ? ああ、怪しいモンじゃない。オレはジェイコブ。こう見えてC級冒険者でな、なり立ての冒険者に指導をしてる」
「し、指導?」
「ああ。なり立てってのは見てくれでわかる。どうだ? 草むしりなんかより、外に出てゴブリン退治でもしないか? 依頼金はお前さんとこいつで分けていい。オレにとっちゃゴブリンなんて、いつでも狩れるしな」
「え!! い、いいんですか?」
「ああ。新人指導もベテランの仕事、ってな」
「オレは付いてくぜ。あんた、どうする?」
「…………」
お金がない。それに、ゴブリン退治は銀貨一枚の仕事だ。
二人で分けても、銅貨五十枚の仕事。安い宿なら二泊はできる。
「やります!! よろしくお願いします!!」
「決まり。じゃ、行こうぜ。冒険者の心得も伝授してやるよ」
こうして、僕は冒険者としての一歩を踏み出した。
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