第11話   引き篭もり

 篠延一也という名の水曜日の彼が

      あの日の僕を救ってくれた。

 

 辛口のジンジャーエールは、

上手く呼吸出来ないでいた僕の喉に刺激を与え、呼吸の仕方を思い出させてくれた。

 

 古く懐かしい空気が漂う街の小さな店の

玉子焼きや鰤の照り焼き、そして焼きうどんが、ざらついた心を落ち着かせてくれた。

 

 彼に、とても感謝している。

 

 

 僕は、体調不良で…と

リモートワークを希望し、有給も使い

2週間自宅に引き篭もっていた。


 リモートワークも然り

食べ物から日用品まで24時間デリバリー可能な今の時代、引き篭もるのにも苦労しない。

 


 金曜日、あの場所に行かなければ

 このまま会わずに終わるのだろうか。


 それで良いのだろうか…


 彼にとって僕は

 どれぐらい必要とされていたのだろうか…

 

 毎日、自分に問いかけていた。

    『どうしたい?』


 しかし、答えは出ないまま

       また金曜日がやってきた。

 

 

 篠延一也とも、あの日以来会っていない。

 月曜に出勤し資料をまとめ、簡単な引き継ぎをし、火曜日から在宅勤務という名の引き篭もり生活をしている。

 

 社内で特に仲が良い人はいない。

 お見舞いや様子伺いの電話がかかってくることもない。


 この10日間でしゃべった言葉は『はい』と『ごくろうさまです』だけだ。

 

 そろそろ、誰かと話したくなってきた。

 Berbungaに行こうか…

 でももし、居たら…

 

 いや、考えても仕方ない。

僕は、何も悪いことしてないんだ‼︎

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