第9話  フレンチトースト

 

「アコちゃん、後で寄るって

       さっき電話あったわよ」

    

「あっ、そうか。今日帰ってくるんだ」

 

 僕は隣に座る田辺暁人に

 

「アコちゃんは、いま部屋に同居させて貰ってる元カノ。と言うか親友かな」

 

「篠延さんはバイなの?」

 

「一也でいいですよ。バイじゃないです。

アコとは同じ高校で、周りの目もあって

付き合ってみるかってなったんだけど

人として好きでも恋愛としては無理で…」

 

「僕はあまり女の子と話しすることも無くて…一応、高校生の時に付き合ってはみたけど、苦痛でしか無くて。その子には悪い事したなと思ってる」

 

「暁人さん、モテそうですもんね!」

 

「いや、僕より一也君の方がモテるでしょ‼︎

明るいし、可愛らしいから」

 

「暁人さんに可愛いとか嬉しいです!

でもモテませんよ。それに今は、友達の部屋を間借りしてる身分だし。

キッチンカー始めたばかりなんで、今はとにかく仕事を頑張ってやっていかないと‼︎」

 

「キッチンカーって高いんでしょ⁈」

 

「僕は初期費用を抑えたかったんで、リースなんです」

 

「リースとかもあるんだ。

   最近始める人、多いみたいだしね」

 

「そうですねぇ。

今は色々なキッチンカーがありますもんね。

暁人さんは、何の料理が好きですか?」

 

「唐揚げ!金曜日に唐揚げ弁当の店が来てるけど、いつも男がメッチャ並んでる」

 

「唐揚げ好きな男性多いですもんね。

チキン南蛮の日とかは、やっぱり男性が多くて、イタリアン系の日は女性が多い」

 

「へー。やっぱりそう云うのあるんですね。

アッ、この前のフレンチトースト美味しかったです。メニューに入れるんですか?」

 

「あぁ、あれはメニューに入れない事にしました。お弁当には軽すぎるんで」

 

「残念だな、美味しかったから

      また、食べたかったのに」

 

「言ってくれたら、いつでも作りますよ」

 

 あれは

あなたに食べさせたくて作ったんだから。

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