第3話 【大丈夫】は決して大丈夫とは限らない

 お店を出るとき「ごちそうさまです」とお店の人に伝える人が好きだ。

簡単なことだけど、意外と言えない、言わない人は多い。

 

 キッチンカーを始めて気付いたことは、言う人がいるグループ(大体、同じ部署らしき数人グループで買いにくる)や親が言ってる家族は、受け取る時に「ありがとう」や「どうも」などの一言を言ってくれる。

 

 おばちゃんはプラス『お兄さんお肌きれいよね』『彼女はいるの』『何処かでお店出してるの』など色んな事を言ってくる。


『愛想が大事よ!客商売は愛想。可愛い顔してるんだから、ニコニコしてたら大体許されるわ』


と開店する時に言われたが、ずっとニコニコしているのも疲れる。特におばちゃんには…

 


 料理の仕込みをするのに、バーの厨房を借りている。

ママが料理好きな事もあり、厨房は狭いながらもバーとは思えない程、色々と揃っている。


 『あなたの作るフレンチトーストに恋をしたから、たまに食べさせてくれればタダで貸してあげる。でもたまには飲みに来なさい』


と夜の仕込みと午前中の準備に厨房を貸してくれた。


 キッチンカーを始める事にしたのもママの

『あんた、あんなクソみたいな店で働いてないで自分の店もったら』の一言から始まった。

 



 確かに人間関係が最悪だったあの店で、よく頑張ってきたと思う。

 元々店長はいけすかない奴だったが、僕がゲイだとバレてしまった日から、虐めが始まった。

 そもそも人の携帯を勝手に見た奴がいて、そこから広まったんだから、見た奴が裁かれるべきだと思う。


 店長や同じ厨房で働く男達は“身の危険”を感じたような反応をし、無視が始まった。

 『僕にもタイプはあるんで!』

と言おうとしてやめた。アホ臭い。


 バイトの女の子達は

『ジェンダーレスのこの時代にゲイだからとかバカみたいです』

と味方になってくれた。


 しかし、ビアンの友達が言うには

『ゲイは大丈夫だけど、女同士は気持ち悪いって子もいるんだよ。なのにオッパイは触ってみたい!とか。矛盾しかないけど、そんな子たくさんいるんだよねぇ』と言ってた。


 そして、そんな子達がいう『ゲイは大丈夫』は、イケメンや可愛い子は大丈夫というBL漫画やドラマ、映画からくる発想であって、全てを受け入れてる訳ではないらしい。


 時代は進み、色々な事を体験していても、学ぶことはたくさんあるものだ。

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