第6話 寒い冬

 いざ、話そうと試みたけれど、なかなか、話せず口が動かない。どうしても、まだ言ってはいけない気がするからだ。そうだ、僕は、大事な課題が終わっていない。"なぜこの力が僕たちに宿ったのか"。僕だって、ドナーが見つからない限り、激しい運動はできない。どうしたらいいのか、もうよくわからなかった。そして、その夜、課題の答えと言える夢を見た。

 

ー夢ー

( 僕と彼女が赤ちゃんのときだった。そこには、遥花の母さんと僕の父さんがいっしょにいた。それは夫婦のように。その二人は、病院で働いていた。そして、僕ら二人を手術室につれ、父の血を僕たちの体に入れていた。その後、すぐ僕たちは眠った。この場面はここで終わりだった。

 場面が切り替わり、中学生時代の僕の父と、遥花の母がいた。このときすでに、今の僕らと同じような状況だった。でも、一つだけ違って、遥花の母は未来が見えていなかった。そして、僕の父が力が宿った理由を探索していた。そして父は見つけた。


"世界のおよそ1億人に一人に未来をよくするためにこの力を与えている。例外で、未来がこの先ないだろうと思う者にも与えることがある。それは、未来のある人を助けるためにちからをあげるということだ。絶対に、未来をよくしてくれる人と、その人を助けるためだけに生まれさせ力を与える人が、出会うようにしている。"


 このように語る人たちを見つけたのだ。それは、僕と同じ名前で同じ顔の少年だった。まさかこんな少年が、こんなにもすごい力を管理しているとは思えなかった父は、デタラメもいい加減にしろ、と少年に言っている。少年はまるで人が違うように、言った。

「信じられないなら、お前の大切な人にこの薬を盛るんだ。この薬を盛れば、お前の大切なゆきえ(遥花の母)も未来が見えるようになる。」


 薬を渡され怖くなった父は、その場から逃げた。そして、気持ちとは反対に勝手に体が動き、遥花の母に薬を盛っている。遥花の母は飲んだ瞬間眠った。まるで、冒頭の場面のように。そして、次の日起きると、遥花の母は未来が見えるようになっているみたいだ。父は驚いていた。でも、その次の日、遥花の母は、未来が見えなくなった。その事が気になり、もう一回あの少年のもとへ聞きにいった。そうすると少年は言った。

「あの女に、力を与えたところで、意味ないからさ。未来が見えていた記憶はすべて消してある。この力を持つ者は、20歳まで生きられない。いずれ死ぬ。だから、死ぬまでに良い未来を作るのがこの力の持つ者の使命だ。できないやつはいらない、そして、死にたくないならその力を捨てることだ。」

「力を捨てる方法を教えてほしい。」

少年は、固まった。そして言った。

「それを教えたら私は死ぬ。死んだら、お前が私の代わりとなる。それでいいんだな?代わりとなったら、お前の大切なゆきえとは、会えなくなる。もし、無理矢理会ってしまったらそのときは、彼女の夫が一生できない。」

「ああ、それでもいい。」

父は、とにかく助かることに必死だったようだ。)


 つまり、僕たちに力を与えるために僕の父と、遥花の母は、もう一度会った。そして、僕か遥花かどちらかが助かるためにどちらかは生まれてきた。どちらかが、どちらかのドナーになるのだろう。


 気がつくと朝だった。たかが夢だから、この話が本当かわからない。早速父に聞いてみることにした。

 やはりそのようだ。夢を見たのが僕ということは、彼女に助かる方法を話すか、ドナーになるか、その決断を僕がする必要があるのだろう。どちらにしても助からないのか。。

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