第7話 シオンの春

 私は、薬で治療してきたけれど、もう、無理みたい。17歳までというのは本当みたいだ。食欲もないし、治療薬ではなくて鎮痛剤のみに変わって、あげくの果てに、もって一ヶ月と言われた。彼は、入院して、一回退院したみたいだけど、今度は、私のとなりのとなりの病室に、再入院してきた。もうすべてがきっと終わりなんだろうと思った。

 そんなある日、楓が私に手紙を渡してきた。その内容は、私が出した課題の答えだった。内容を見て驚いた。どちらかを助けるためにどちらかが生まれてきた。そう考えると、彼女は真っ先に思ったことがあった。遥花の体は、心臓だけは人一倍強い。楓は、心臓が悪い。なら、私が楓のドナーになれればいいと思った。一方で、楓は、私のドナーになろうとしている。でも、私の体はもう助からないと決まっているのだから、楓に、心臓を渡したいと思った。楓はきっと受け入れてくれないだろうけど。


「遥花は、もうじき消えてしまう。もっと僕が早く、真相を知って、もっと早く、遥花のドナーになって、もっと早く、、」

楓が言っているのを遮って私は言った。

「そんなこといわないで。私は、この運命に生まれてしまったのだから、受け止めるよ。楓は許してくれないかもしれないけど、これが私の人生にとって、最後のお願いだから、聞き入れてほしい。私の心臓で生き延びて。あなたは、未来予知の力を捨てる方法を知っていて、なおかつ、心臓以外どこも元気でしょ。私はその逆だから。心臓しか強くない。やっぱり私たちは、まるでパズルの欠けたピースがはまるみたいな関係なんだよ。。」




 その後、僕は彼女の心臓をもらい、無事に生き延びた。未来予知の力もすぐに捨てた。まだ僕の中で、遥花の心臓が動いている。この命を大切にして、僕は生きていく必要がある。そして、遥花の分まで幸せにいきる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る