第二章
第5話 二度目の秋
今日は、遥花の入院するへ病室行った。海外で報告された、薬による治療を進めていることもあり、少し、病状が改善したみたいだ。歩いたり、少しくらい体を動かすのも、余裕なようだ。
二人で話していると、僕の体に異常が起こった。突然、心臓の辺りが痛み出したのだ。最初は、我慢することができる痛みだったが、後に、我慢することができない痛みへと変わった。でも、彼女の前でそんなそぶりをひとつも見せたくなかった僕は、さっと話を終わらせ、病室を出た。病室を出たとたん、彼女の前で我慢していた分の痛みが今になってドッときた。病室前で騒がれてはいけないと思い、なるべく遠くへ遠くへ歩こうと試みたが無理だった。僕は、彼女の病室の目の前で倒れてしまった。当然辺りは、騒いでいる。
彼女は何事かと思い、点滴の袋のかかった棒を持って、病室を出た。それを見て彼女は驚いた。病気による症状とは別に、呼吸が困難になりそうなくらい、驚いた。倒れた彼を見て何も発することができなかった。
その日の夕方、たまたま楓は、私の隣のベッドに入院することになった。彼の意識が戻ったら、なんと言えばいいのか。私だけでなく、彼も辛い日々を過ごしてきていたのかと思うと、それこそ、病気の症状よりも、辛かった。今日、私は彼に、"この治療がうまくいけば、20歳なんて、余裕で越しちゃう!"とか言った。そんなこと、全然言ってはいけなかったと思った。
楓のお父さんが病室に入ってきた。なんとなく、慌てて目を閉じ寝ているフリをした。楓のお父さんが何度も、"楓!!"と叫んでいた。すると、楓は目覚めた。その時、医師は色々と説明していた。そして、楓は言った。
「とう、さん。」
楓は泣いているようだった。そして、父さんは言った。
「遥花さんとやらに、予知能力を捨てる方法を話したのか。」
遥花は、ビクッとした。
(私?予知能力を捨てる方法?)
「話してないよ。彼女の前でもがき苦しむのなんか嫌だから。父さんはきっと知らないと思うけど、この力を持っている者が20歳まで、生きられたことはないんだ。実は、遥花の頼みもあって、この力について調べてみたんだ。そしたら、生きられた人はいないってことがわかったんだ。きっと、この力を捨てればいいんだろうね。実際、父さん生きてるし。でも、彼女のためと言うわけではにけれども、運命に逆らうのは僕にはできない。だから、病気になった。それだけの話だと思うんだ。」
もう遥花は、寝ているフリをしているわけにはいかなかった。そして、泣いているのを隠しながら呟いた。
「へえー。そこまで調査してくれてたんだ。」
私が起きていることを、アピールした。彼は、驚いただろう。まさか、隣が私だとは思ってもいないだろうから。
「聞いてた?」
「うん。心臓の辺りが痛くなったのは、一回目なの?」
「うん。まさか、一回目が遥花の前とか、、だめだよな。」
沈黙が続いた。いつのまにか、楓のお父さんはいなくなっていた。
「未来予知の力を捨てれば助かるなら、楓だけでも助かってよ。私は、、」
まだ話しているのに、楓が横やりを入れた。
「そんなことできない。僕だけ生き続けることはできない。死ぬよりも、心臓が痛くなるよりも辛い。」
「言ったでしょ、私は、もう死んでてもおかしくないくらい、体の至るところが壊れてたんだから。それが、たまたま治ったって話で。」
そして時が過ぎた。彼女は、薬で回復しそうだったものの、逆戻りしかけている。僕は、そんなにかわらない。この頃僕は思い付いた。どうせ、病気で苦しみ死ぬんだったら、彼女に助かる方法を教えて、死んだ方がいいと。彼女が、何もできなくなってしまう前に、僕は、助かる方法を教えることを決意した。
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