第36話 森を抜けて



 一陣の風が森を渡ると

頼りなく燃えていた焚き火の炎が力尽きて

小さな煙が木立の中に

立ち昇っては消えていく。


ロルカは自国製の皮でできた長靴で最後の燻りを踏み消す。


「エリオット、私の作った結界が破られた。これからの野営は長居が出来ない」


とパステルナークが言うと


「ロルカも二つの夜を越えて元に戻ったとまでは言えないまでも、自分の足で立つことができる様になりました」


とエリオットは答えた。


「大丈夫だ。エリオットの煎じ薬が効いたようだ」


とロルカも頷いて言う。


実際にエリオットの摘んできた薬草が、ここまで効くものかとロルカは強く思う。


また

それとは逆に妖魔との戦いで

待てるだけの念通力と念動力を使い戦った事が

此の人智を超えた力がどれほど体力を消耗するかと言う事も悟った。


「行くぞ。陽が落ちる前に森を抜ける」


パステルナークの言葉に二人は頷き

二頭の白い鹿は誰に促されるまでも無く歩き出した。

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