第37話 大地へ飛べ



 森を抜けると断崖絶壁の丘に出た。


今、エリオットとロルカは

その丘から向こうに見える王都を見ている。


栄えている

妖魔に支配されているどころか

都は活気に満ちている

とロルカは思う。


その姿を見てエリオットが言う


「ロルカ、念通力を使え」


ロルカは言われた通り

目で見るのではなく

目を瞑り念通力を使って王都を見直した。


脳裏に王都が映って来ると

その都を気味の悪い黒い靄が覆っている事に気付く。


「これは?」


ロルカの疑問にパステルナークが答える


「都は今、貧富の差が激しく、王都には富める者しか住んでいない。王都の周りには疫病が蔓延り、貧しい者達だけが住んでいる。念通力を使い耳を澄ませてみよ、聞こえるだろう正直で貧しい者達の呻き声が、やがてその声は恨みと憎しみに変わり、犯罪と争いが支配する」


ロルカは敢えて念通力を使わなかった。


それどころか耳を塞ぎたいような気分であった。


「パステルナーク様、行きましょう」


エリオットはそう言うと

ベルレーヌに頷き

白い牝鹿は一気に崖を飛び降り

まさに飛ぶようにして岩壁を駆けることもなく

この高い断崖から舞い降りる。


まだベルレーヌが大地に着かない内に

コクトーが念通力でロルカに語り駆ける


「さぁ、我々もベルレーヌの後を追いましょう」


そう言うとコクトーも丘の土を蹴ると

一息に空に舞い

風を切るようにして遥か下の大地へと飛んだ。

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