第33話 木漏れ日



森の中の鬱蒼とした緑の隙間を縫って入る太陽の光でも

目に刺してくる光線は眩しい。


小鳥達の囀りに誘われて目を覚ますが

ロルカ以外は鹿のコクトーやベルレーヌも含めて全員が目を覚ましていたようだ。


「目を覚ましたか」


とパステルナークが声を掛ける。


無理もない

風の者として戦った初めての争いである

とパステルナークは思っている。


初めて妖魔と戦った時

ロルカはネルーダ王国親衛隊隊長の騎士として

全てパステルナークの指示に従って

二体の妖魔を音もなく斬り葬り去った。


草の上

ロルカは起きようとするが

身体の節々と筋肉が痛む。


自分では知らぬ間に

限界を越えるような動きをしていたのであろう

戦いの間に其れは感じられないものである

戦いが激しさを増せば尚更である

喩え骨が折れていようとも。


「エリオットは?」


とロルカが尋ねると


「水を汲みに行っている」


とパステルナークが答える。


「コクトーとベルレーヌも見当たらないようだが」


「日が昇るとともに、エリオットがボードの群生地へ連れて行った」


一体全体

あの娘に疲れが溜まることはないのか?

とロルカは毎度のように驚き

ため息を吐く。


「もう一晩、野営する」


とパステルナークが言うと


「そんな時間は無いだろう」


と呟くロルカにパステルナークが諭すように言う


「短い休息の時間を捨てれば、安定という永遠も捨てる事になる」


続けて言う


「養生をしろ。準備不十分のまま戦えば、返り討ちに遭うだけだ」


「済まない」


「安心することだ。私達は、その為に失敗した」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る