第31話 焚き火



 辺りが闇に包まれる前に、ロルカは薪に火を入れる。


エリオットが倒した木の枝の、その生木は水分を含んでいて、火打ち石ではなかなか火が付かない。


ロルカは暫く奮闘していたが、やがて諦めて、念動力を使って高速で火打ち石を擦り合わせる。


直ぐに付いた火に息を吹き入れると、もうもうと煙を上げて火が燃え出す。


それを見ていたパステルナークが声を出して笑い、


「そのような念動力の使い方をエリオットに見られたら、さぞかし怒られるであろうな」


と言った。


暫く焚き火を見つめながらロルカが言う、


「なぁ、パステルナーク。お前は一体何者なのだ」


「そのうち解る」


「妖術で剣に変えられたと言っていたが、元に戻れるのか」


「岩山の王ポーを消した後でしか分からない」


その言葉を聞いてロルカは思う。

もしも元に戻れず、剣のままであれば、この剣を携えて母国に戻ろうか?

それとも元の姿に戻れたなら・・・。

ロルカが思いを巡らせている間にエリオットが帰って来た。


エリオットは二本の水筒を腰に下げ、背にはまるで柴刈りにでも行ってきたかのような山積みの草を背負っている。


エリオットは焚き火を見る。

ロルカが黙然としている間に焚き火は燻っているだけで炎は消えていた。


エリオットは、片手で下から物を投げるように腕を振ると、一陣の風が燻っていた焚き火に入り、再び炎が燃え盛る。

念動力である。


ロルカが驚いたようにパステルナークを見ると、まるで笑いを堪えているように剣が震えていた。

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