第27話 四



 森の中の細い道を難なく白い鹿が歩いて行く

時には小さな枝を見事なツノで払いながら。


誰も喋らない

念通力も使わない。


森の中では

見事な木々の緑の隙間を縫って

時折差し込んでくる陽光が眩しい。


一陣の風も吹かない此の場所の向こうで

小鳥達の囀りが聞こえる。


その時

パステルナークが言う。


「ロルカ、分かるか」


ロルカは頷きながらエリオットを見る。


「パステルナーク様、シキョウですね」


「そうだ、シキョウは4体だ」


「はい、コントン、トウテツ、キュウキ、トウコツ、ですね」


「アラゴンの牧場へ行く途中で襲って来ると思ったが、その代わりに此の深い森で4体を送り込んできたようだ」


「承知しました。ロルカ、トウコツを打て。私は残り三体を片付ける」


ロルカは、いつものように静かに頷く。


二人は何事もなかったように

また静かに白い鹿を進める。


更に進んで行くと森も深さを増していく。


そこではシキョウ達が話をしている。


コントンが言う、


「フッフッフ、ヤツラ、マダ、ワレラノ、ケハイ、キヅイテイナイ」


「ショセン、ニンゲン、ワレラニ、カナワヌ」


とトウテツが答える。


「ヤッタアト、ヤツラノニク、クッテイイカ」


次にキュウキが言うと、


「ヒトノニク、ウマイ、クウゾ」


そして答えてトウコツが言う、


「パステルナーク、ツルギニカワッタ、クエナイ、ポーサマノトコロ、モッテイク、ポーサマ、ゴホウビニ、ヒトノニク、クレル」


それに答えてまたトウテツが言う、


「フェフェフェ、ショセンニンゲン、ワレラニ、カナワヌ」


「ソウダ、ソウダ、コイツラノニク、ウマイ」


そう言ってコントンがトウテツの方を振り返ると・・・

トウテツの首がない。


「所詮、人間、誰に敵わぬと言うのか?」


首を失った大きなトウテツの体が太い枝からどさりと地に落ちると

後ろには小柄な娘が血のついたクノーを両手に持って立っている。


丁度その時

森の中を歩いている鹿に乗ったロルカが後ろを振り向くと

エリオットの姿は無かった

エリオットは既に念動力を使ってトウテツの背後に回っていた。


そのエリオットを見て

コントンが言う。


「フッフッフ、ヨウマタイセンノ、イキノコリ、エリオット、シニニキタカ」


「残り三体、それで終わりだ」


エリオットはそれだけを言い残すと

森に吸い込まれるようにして消えた。

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