第20話 アラゴンの牧場



 牧場で少年の声がする


「先生、マヤコフが駄々をこねて来てくれません」


「ホイット、マヤコフの言いたい事をちゃんと聞いたか?」


「マヤコフは喋ってくれませんでした」


「そうかな。私が行ってみよう」


アラゴンは牧舎の方へと歩き出す。


マヤコフはまだ小鹿だ。

子鹿だけにやんちゃ盛りで落ち着きが無い。


アラゴンは、子鹿のそばへ行き、そっと首を撫でながら子鹿の眼を見つめる。


「おーい、ホイット、こっちへ来んかー、そんな所で何をしている」


ホイットはモジモジしながら牧舎に入って来る。


「なあホイット、マヤコフの朝の散歩、サボっただろう?」


「いえ、先生、ちゃんと行きました」


「そうかなぁ、然しそれは、牧舎から出しただけで遊んでやらなかっただろう?」


「それは、その、洗濯物がいっぱいあって、ですから・・・。」


「分かったよ。でも子鹿は遊び足らんのだ。子鹿と遊ぶのも仕事と勉強だ。でないといつまで経っても鹿達とお喋りできんぞ」


「分かりました先生、今から遊んでやります」


その声を聞いてアラゴンは小さな柵を開け放ち、子鹿を牧舎から出してやる。


マヤコフは飛ぶようにして牧場へ飛び出し、ホイットは急いで子鹿を追いかける。


「あははははー」


アラゴンは大きな声で笑う。

やんちゃ盛りの子鹿と追いかける少年の姿、見ていて飽きない。

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