第14話 薬湯



エリオットが夜遅くに、修行の場としている小さな丘に戻って来た。


焚き火は既に消え、赤い炭だけが燻されている。


エリオットは、そこへ新たに枝を入れ、空気を吹き入れる。


火が燃え上がると、既に冷えてしまった水の入っている器に少しの水を足し、再び器を火にかける。

そこへ闇の中で採って来たばかりの薬草を加え煎じる。


暗闇は、風の者にとって好都合である。目で見る現実世界は、時に心を惑わせる。

念通力を使って行動する者には、目に見えるものよりも気配を感じて動く方が正確な判断ができる。


「エリオット、済まない」


とパステルナークが静かに語り掛ける。


「いいえ、この者の命は当国にとって大切な命」


「感謝する」


「はい、そしてパステルナーク様にとっても・・・。」


「何か感じるのか?」


「いえ、何も・・・。」


「ならば、そのようなこと、二度と口にするな」


「はい」


薬草の効力が熱い湯に充分に滲み出た頃合いをみて、エリオットは器を火から降ろして冷まし、ロルカの口元に持って行く。

薬草の匂いがロルカの鼻を突く。


「エリオット、あ、り、が、とう」


「喋るな、飲め」


エリオットはロルカの口元に薬湯の入った器をあてがう。

薬湯を口に含むと、ロルカは再び眠りに落ちた。

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