第13話 風の村
修行は言うまでも無く熾烈を極めた。
ある夜、ロルカの体調が悪くなり熱にうなされていた時、側に置いていたパステルナークが語り掛けてきた。
丁度、夢現の中で、どうしてここまでしてこの国を助けなければならないのか?
それだけが頭の中でぐるぐると回っていた時だ。
「ロルカ、聞こえるか?」
ロルカは熱にうなされながらも目を開いて、聴こえている、と答える。
「ならば聞けロルカ、エリオットの鍛錬はきつい、然し聞いてほしい。風の者は王国の村々から幼児を募集して鍛えられる。エリオットもその一人だが少し違う」
また少し間を置いてパステルナークは続ける。
「一度風の村に入った者は、その村から出られない。幼くして村に入れられ厳しい修行の毎日で、母や父、兄弟にも会うことは許されない。風の村から出られる時、それは二つある。死を見た者、当国の蘇生術と薬草で蘇生させるが、それでも幼くして亡くなる者もいる。なんとか復活できた者だけが、それなりの金貨を持って住んでいた村に帰れる。勿論、残念なことに死んだ者は、それ以上の金貨が家に送られる。風の者と呼ばれる者達は、その過酷な鍛錬を超えて来た者達だけだ。良いかロルカ、エリオットが優れた者であったということを言いたいのではない。むしろ、エリオットは1度ならず2度も蘇生術を受けてきた落ちこぼれだったのだ。蘇生術を受けながらも風の村に留まれた理由は、エリオットには帰る家が無かったからだけではない。妖魔の妖術によりエリオットの母も父も悪鬼にされ、エリオットは両親に殺されるかもしれない場所から命からがら家を出、村を出、自力で風の村にやって来たのだ。そしてエリオットはこの村で修行に励んだ。恐らく修行がどんなに過酷なものかはエリオットには想像もできなかったであろう。そしてとうとうエリオットは、この村で修行中に幼いエリオットは死を見たのだ。そこで修行は終わり、蘇生できれば風のものになる資格なしとして村から出るか、蘇生できなければ死あるのみ。しかし蘇生術を受けたエリオットは命を取り留め、村を出ずに、風の村で掃除や洗濯、食事の用意をすることで此の村に居ることができたのだ。エリオットは最初から優れていた風の者では無かったのだ。エリオットの優れたところは一つだけだ。エリオットは、風の村で修行する者達の世話をしながら、一人で修行をしていたのだ。その努力が実り、再び修行をすることを許され、今のエリオットが存在するのだ。ロルカ、修行は厳しい。何年もかかって身に付ける術をお前は短期間で身に付けなければならない。しかし、エリオットがこんなに一生懸命に人に教えることなどなかったのだ。済まない、分かってくれ」
ロルカは微かにうなづいたかと見えると、静かに目を閉じて、深い眠りの中へ落ちて行った。
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