第11話 崖崩れの道



朝、起きるとエリオットは既に朝食の準備をしている


朝食と言っても、昨夜の残り物を火にかけているだけのものだという事が、その優しい香りで分かる。


顔を洗い、朝食を済ますと、エリオットは着物の裏側に金具を仕込んでいる。

両刃の金具のようなもので先は鋭く光っている。


ロルカがその所作を眺めていると、エリオットはロルカを見ずに言う、


「これか、これは、クノー、という武器だ。手に持って使う事もできる、投げて使う事もできる。私達、風の者の使う器具だ」


ロルカも帯刀し、外へ出ると、既に外で待っていたエリオットと共に山へ向かって歩いた。

人の気配を感じない静かな村だ。

村を抜けると一羽の大きな鳥が山の上で旋回しているのが見える。

猛禽類であろうか?


暫く歩いて、エリオットが立ち止まったその場所は、そこだけ崖崩れが起きたのであろうか?大小様々な石が積み重なって一本の道のようなものが出来ていた。


勿論、それを道と呼べるのであればだが、それはまるで岩登りのように険しく、一歩間違えれば自然に積み重ねられただけの石は崩れ、再び崖崩れが起きるかもしれない道では無い道であった。


その石道とは裏腹に両脇には鬱蒼とした木々が背高く空へ向かって聳えていた。


エリオットはロルカを振り返ると、


「行くぞ」


そう言っただけで、まるで渓谷の岩と岩を駆ける抜ける鹿のように、軽やかに跳んで登って行った。


早い、俊敏すぎる、ロルカは声に出さずに呟くように唇を動かせた。


「何をしている」


大きな岩の上からエリオットに声をかけられ、ロルカは、


「今行く」


そう言うと両手と両足を使ってよじ登り始めた。


「無理をするな、エリオットは妖魔と戦って生き延びた、たった一人の風の者だ。最初から追い付こうと思うな」


「分かっている」


ロルカは剣に向かって言う。


最初から追いつこうなどとは思っていない、ただ付いていけるだろうか?そんな不安を持っているだけだ。

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