第10話 小屋の夜



ロルカが湯から上がって小屋へ戻って来ると夕食が用意されていた。

この土地で育つ野菜であろう、それと共にこの土地で採れたものであろう穀物とが、一緒に煮込まれたものが椀に入っていた。


膳は三つ、パステルナークの前にも置かれていた。


「今宵は、この様なものしか用意できぬ」


エリオットが言う。


ロルカは頷き、黙って膳の前に座るが、なんとも言えない優しい香りがする。


「菜は皆、この土地で採れる薬草だ。身体に良い、しっかり食べろ。明日からやってもらいたいことがある」


エリオットに続いてパステルナークが言う。


ロルカはそちらにも頷きながら、はて?何であろう?と思いながらも、膳に箸をつける。

美味い、一日中歩いたせいであろうか、薬草の成分が煎じ薬のように身体に染み込んでいくのが分かる。


再びパステルナークが言う、


「明日からエリオットと共に、行に励んでもらいたい。どうだ?」


ロルカは剣を見ながら、静かに頷き、エリオットにも頭を下げる。

ロルカは先ほどの、井戸でのエリオットの動きを思い出している。彼女には到底敵わぬ、対撃ちできる相手でなければ教えを乞うしかない。


食事が済むと、3人は剣を挟んで川の字のようにして眠る。


暫くしてロルカを気遣ってかのようにパステルナークが言う、


「ロルカ、眠れ、明日からは厳しい鍛錬が待っている。何も考えずに眠れ」


ロルカは眠れずに、この数日の出来事を考えていた。明日からの行とは一体どのようなものかを考えていた。


「エリオットは眠っているのか?」


その問いに答えてパステルナークが言う、


「エリオットは眠っているようで眠っていない。頭も身体も眠っているが感覚だけが覚めている」


そういうものか?一体この国の者達は何者なのだ?考えもまとまらずにロルカは眠りに落ちていく。

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