第7話

 さくらの木の脇の家。

 

 

 古い古いこの家に、俺は毎年訪れる。

 

 

 

 

 

 会いたかった。

 

 

 会いたかったよ。

 


 本当は離れたくない、側に居たい。

 

 

 

 

 

 だって俺は、あなたが好きだから。

 

 

 

 

 

 抱き締めて、触れる。キスをする。

 

 

 こうして触れることができるのは、春のこの、さくらが咲いてるこの、今だけ。

 

 

 

 

 

 今、だけ。

 

 

 

 

 

「会いたかった。会いたかったよ」

「うん………」

 

 

 

 

 

 譫言みたいに繰り返して、俺はあなたにキスをする。

 

 

 

 

 

 初めてキスをしたのはいつだったか。

 

 

 初めて身体を重ねたのはいつだったか。

 

 

 

 

 

 古びた応接間。ソファの上。

 

 

 

 

 

 窓からさくらの木が見えるそこで、俺とあなたは想いを寄せあう。

 

 

 オルゴールのメロディーを、聞きながら。

 

 

 春が来て、さくらが咲いて、やがて散る、その時まで。

 

 

 俺たちは抱き締めあい、キスをして、身体を重ねて。

 

 

 

 

 

 ………そして別れる。忘れる。

 

 

 

 

 

 繰り返し、繰り返して。

 

 

 

 

 

 いつまで?

 

 

 ずっと?

 

 

 

 

 

 ソファの上で、1年振りのあなたに夢中になる。

 

 

 1年前よりずっと、あなたへの想いが深くなっている。

 




 

 甘い息を吐いて、甘い声をあげて、白いその身体をあなたは揺らす。

 

 

 

 

 

 あなた。

 

 

 俺の、好きな、あなた。

 

 

 女でも、男でもない、あなた。

 

 


 


 さくらの。 

 

 



 

 さくらの………あなた。

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