第31話 魔女は旅に生きる
私はまた、旅に出ることにした。魔女とは、旅に生きるものだ。置き手紙を遺して、そっと部屋を出たが、無駄だった。
リンクスさんに、見つかってしまった。
「魔女様」
夜だ。周囲の光をうけて光るリンクスさんの目に見据えられ、私はすごすごと部屋へ戻った。
翌朝一番に、シロが、私が使わせてもらっている部屋に押しかけてきた。
「魔女、どうして、魔女。魔女はシロちゃんと一緒にいてくれるのでしょう」
人の姿だというのに、足を踏み鳴らし、吠えかからんばかりのシロに、私は閉口した。
「シロちゃん、落ち着いて」
「嫌だ。魔女は、どこかに行こうとしたもの。嫌だ。ここで見張る」
シロは、扉の前に置いた椅子に陣取った。
「シロちゃん。シロちゃんは、シロちゃんのお勉強があるでしょう」
「魔女が、どこかにいくから駄目」
結局、部屋に現れたリンクスさんに、シロちゃんは回収されていった。
「魔女はシロちゃんと一緒」
シロは毎晩、私の部屋に見張りと称してやってくるようになった。
「そうおっしゃっておられますので」
リンクスさんは、シロの味方だ。リンクスさんだけではない。お城にいる獣人達、みながシロの味方だった。人よりも、嗅覚や聴覚に優れる獣人達を出し抜くのは、魔女でも難しい。
「魔女は旅に生き、各地の人に、代々の魔女が伝えてきた知恵の恩恵を授ける存在です。このまま居候を続けるわけにはいきません」
一つところでのんびりと過ごすのは魔女の信条に反する。
私の嘆願に、シロのお父さん、領主様は、とある提案をして下さった。
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