第24話 姉と弟

「私のことは、ヴィアンカと呼んで欲しいわ」

お互いの挨拶が終わった後、シロの姉、ヴィアンカさんは、そう言ってくれた。

「ありがとうございます。でも、シロちゃんのお姉様ですから」

「だからよ、だからこそよ」

ヴィアンカさんが、私を抱きしめた。自分で強いと言い、リンクスさんも認めるだけあって、なかなかに力が強い。何故かシロが怒って、ヴィアンカさんの足に体当たりをしているが、ヴィアンカさんはびくともしない。


「シロという名前もつけてくれて、縁もゆかりも無いこの子を育ててくれたわ。獣人の私達でも、獣人の赤ん坊を育てるのは大変よ。人族のあなたが、獣人の赤ん坊を育てるのは大変だったでしょう。本当にありがとう」

頬を擦り付けてくるヴィアンカさんは、私に甘えるときのシロによく似ている。


「魔女!」

突然、人型になったシロは、私から、ヴィアンカさんの腕を引き剥がした。

「シロちゃん」

「あら、ケチ」

私とヴィアンカさんの抗議の声を、シロは無視して、私を背に隠した。


「シロちゃんどうしたの。私とお姉さんが仲良しになっただけよ」

人型なのに、狼のときのように唸るだけで、シロは何も答えない。


「嫉妬深い男は嫌われるわよ」

私の眼の前にあったのはシロの背中だ。ヴィアンカさんの言葉に、シロがどんな表情をしたのかわからない。ただ、萎れたようになり、また狼の姿に戻って、私に一生懸命身体を擦り付けてきた。


「よしよし。シロちゃん、いい子にしようか、ね。お姉さんに怒ったら駄目よ。仲直りしようね」


 ヴィアンカさんは、勝ち誇った笑顔を浮かべていた。

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