第25話 姉と育ての親
旅の仲間に、ヴィアンカさんが加わった。ヴィアンカさんは、私と同室を主張し、シロは私の部屋から追い出された。
シロは、しばらく部屋の前で悔しがって足を踏み鳴らしていたが、リンクスさんに引きずられていったのか、足音がしなくなった。
「まだ甘えたい年頃なのかしら」
廊下の物音が静まったあと、ヴィアンカさんが首を傾げた。
「獣人は、いつから成人なのですか」
私は疑問に思っていたことを訪ねた。
「シロはそろそろ成人よ。私の五歳下だもの。あと二年も無いわ」
「私が、甘やかしてしまったのでしょうか」
「あの子が甘えたいだけよ」
私の言葉を、ヴィアンカさんは、躊躇いなく一刀両断した。
「獣人の中でも、特に私達のように、狼や犬といった群れで生きる先祖を持つ獣人は、仲間意識が強いの。シロにとっては、育ててくれたあなた一人が、群れの全てだと思うの。だから、あなたに力いっぱい甘えるのだと思うわ。人族は、私達獣人に比べて、淡白だそうね。人族のあなたからしたら、獣人は好き嫌いが激しいということになるから、あなたに迷惑をかけていないか心配だわ」
私を気遣ってくれるヴィアンカさんの優しさに、私は気になっていたことを打ち明けることにした。
「迷惑だなんて。逆に、魔女の私が犬と思って育てていたので、獣人として知るべきことを、シロは知りません。シロに、可哀想なことをしてしまったのではないでしょうか」
ヴィアンカさんは笑ってくれた。
「気にしなくて良いと思うわ。大切なことは、さほど変わらないはずよ。挨拶する、お礼を言う、仲間を守る、無闇に誰かを傷つけたり殺したりしない、誰かのものを盗まない、かしらね。それは人族でも同じでしょう」
私を安心させるかのように、ヴィアンカさんは、微笑みながら、平易な言葉を紡いでくれた。
「はい。ただ、私は魔女です。人ですが、魔女ならではの生活をしていますから。どこまで教えてあげられているのか、わかりません」
「大丈夫よ」
ヴィアンカさんは、私を抱きしめてくれた。
「大丈夫よ。私はシロに会ったからわかるわ。シロはいい子よ、優しい子よ。あの子を育ててくれてありがとう。あなたがシロを育ててくれてよかったわ」
ヴィアンカさんの言葉が嬉しかった。
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