第1話 天界面接

「次!第8275番」


今は天国と地獄の選別作業を行っているらしい。


っていうか、8千番て、どこから数えた数字なんだ?まさか1日のな訳ないよな・・・。

一人じゃないことがありがたいような、こんなにも世知辛い世の中なことに悲しいような。


そんなことを考えながら俺は天使?がいる門番へ向かった。


そこでは天国?へいくための面接のようなものが行われている。


嘘をつくと地獄なのかな、よくわからないけど嘘つかないで行かないとな


・・・。


嘘か・・・。


もし基準がそこなら俺は天国にはいけないんだろうな。

これからの人生?が決まるかもしれないという時に僕は面白いくらい冷静だった。

死んでいるから感情がなくなっているからだろうか。

なんというか、僕は今生まれては初めて、「世の中」に忖度していない。

まあ、しんでんだけどね。




天使の質問は当たり障りのないものだった。まるで企業の面接を受けているかの如く。だけど所々に答えづらい質問があった。果たして僕の来世はどうなるのか。




『それでは最後の質問です。』


「はい。」


結構長いことやっていたのではないだろうか、、この数時間で僕の人生は丸裸にされた。こんなに自分を客観視したことはなかったからすごい新鮮だった。

なんかどっと疲れた。死んでもこんな感情があるんだな。

やっと終わると思った僕は心底ホッとしていた。


「正義とはなんですか?」

天使は微笑んでいる。

まるで天使の微笑みのような・・・いやそのまんまじゃないか!


・・・


後から考えたら、みんなに聞いている質問なのかもしれない。だけど、死ぬ直前までこの正義を考えていた僕にとってその質問は答えに詰まるものだった。

なんて答えるのが正解なのだろうか。


・・・。

正解ってなんだ?僕は死んでまで正解を探しているのか。

もういいだろ。

どんな結論になろうが、俺の本心が誘った場所で、大人しく綺麗に終わろう。


「絶対的な正義なんてないんだと思います。」

「誰かにとっての正義は誰かにとっての悪になりえるんだと思います。」


正義をつらぬくなんてのは聞こえはいいけど、その理想には数多くの屍を積んでいるかもしれない。

俺がやっていたことだってそうだ。僕には正義があった。そしてそれを肯定してくれる人もいた。だけどその裏で僕は何人の人生を壊したのだろう。その人たちにとって僕は悪魔に見えたに違いない。

そして僕はそれに気づきながら、無視していた。

自分を客観視することを放棄した人間が行き着く先は道徳の裏側だ。


だからこそ絶対的な正義なんてあるはずがない。


・・・。


だけど、正義を考えることをやめたら、人は一生正義の答えを見つけられないだろう。


だから、


もし僕に次があるのなら。


「僕は今世では“商い人”でした。言葉巧みに商品や情報を売りつける。会社の命令で商品を売った相手を裏切ったこともありました。もしかしたら誰かから見たら僕は悪魔にでも見えていたのかもしれません。でもそう思われることは仕方のないことだと思います。」


「だからもし次があるのなら、せめて自分にくらい胸をはって生きていけるような人生を過ごしたいと思います。」


・・・。


・・・。


やっぱまずかったでしょうか。僕は詰みかな?


『ふふふ、私の前で悪魔を語りますか?』


・・・


『でも、面白いと思います。ですからあなたにチャンスを与えましょう。』


「チャンスですか?」


『はい。あなたの今後の人生に幸あれ。』


「あの、どういうこと・・・」


やばいなんか眠くなってきた。これってあの時と同じだ。頭がいたい。


薄れゆく意識の中で、僕は最後の天使様の言葉を聞いた。


『新しい人生であなたらしさを探してください。あなたらしい正義を見つけるのをここから楽しみにしていますよ。』


・・・・・。


・・・。


・。



ここは、どこだ。


次に目を覚ました時、僕は大草原のど真ん中。

微かな記憶と知識を手に、、、俺は知らない世界に足を踏み入れた。



「え、ここどこ?」


少し離れた先で、獰猛な動物らしきものと人が戦う声が聞こえる。

そして俺は今手ぶらでこんな場所にいる。


少し冷静に、いや冷静になるまでもなく、だ。


「・・・俺やばくね?」


前世で死んでから体感どれだけ立っただろうか。


・・・。


死んでから初めて、俺は冷や汗をかくことで、今、「生」というものを心から実感するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る