第31話 星綾祭3日目
いよいよ3日間ある星綾祭も最終日となり、今日は体育の部の本番だ。
天気予報が曇りとなっていて雨を心配したわけだが、予報と変わって晴れてくれたため安心している。
「和人君、頑張ろうね」
「ああ、何とかして1位を取りたいな」
「だな、和人も河上さんも頑張ろうぜ」
男女混合リレーに参加する俺と賢治、恵美はリレーが始まる直前にそんな事を話していた。
ちなみにアンカーは俺のため責任重大であり、今から緊張をさせられている。
しばらくして一番最初のプログラムである男女混合リレーが始まったわけだが、現在俺達のチームは8チーム中3位を走っているためまずまずの出だしだ。
この調子なら1位も射程圏内に入ると思いながら俺は見守っている。
そしてリレーも後半戦に突入して、いよいよ俺の走る番になった。
「和人君、パス」
「任せてくれ」
恵美からバトンを受け取ったアンカーの俺は全力で走り始める。
現在の順位は2位になっており1位も十分狙えそうな位置にいるわけだが、3位や4位のチームも全力疾走で追いかけてきているたも一切油断はできない。
2位の座を死守しながら1位を抜かそうと奮闘する俺だったが、中々距離が縮まず焦りが生まれてくる。
そんな時だった、俺の耳に夏海ちゃんの声が入ってきたのは。
「パパ、頑張って。絶対勝てるよ」
ちょうど夏海ちゃんの座っている席の前を走っていたおかげで応援の言葉がたまたま俺の耳に入ってきたらしい。
そんな言葉に勇気づけられたと同時に、娘にはカッコいいところを見せなくてはと考えた俺は最後の力を振り絞って全力で走る。
さっきまで開いていた1位との距離がどんどん縮み始め、ゴール目前で遂に横並びとなった。
1位を走っていた選手は突然追い上げてきた俺の存在を見て動揺したようで、その顔には焦りが出ている。
結局、ゴール付近で激しくトップ争いを行った末に、1位でゴールする事ができた。
「和人君、やったね」
「流石和人、やってくれると思ったぜ」
「あそこから追いつくなんて凄いよ」
ゴールした俺が休んでいると一緒にリレーを走ったチームメイト達が駆け寄ってきて、口々に俺を褒め称え始める。
「いや、俺だけの力じゃないよ。みんなが頑張ったから1位を取れたんだ」
俺はそう謙遜して答えたが、しばらくの間周りからはヒーロー扱いをされた。
その後、体育の部のプログラムはどんどん進んでいき3年生の創作ダンスの時間となる。
創作ダンスの発表はクラス順に行っていくため、美菜先輩のいる3年5組の出番はまだまだ先だ。
「みんな息がぴったりだね、やっぱりめちゃくちゃ練習したんだろうな」
「確かにな。来年は俺達が創作ダンスをやらなきゃいけないけどちゃんとできるか心配になってくるよ」
俺と恵美は3年生の創作ダンスの発表を見ながらそんな感想を漏らした。
そう言いたくなるくらいクオリティが高かったのだ。
それから次々に発表は進んでいき、いよいよ美菜先輩のいる3年5組の番となる。
曲がスタートして3年5組の生徒達が一斉に踊り始めるわけだが、他のクラス同様抜群のコンビネーションであり、全員の動きが見事にシンクロしていた。
その中でも美菜先輩は身長174cmの長身で美人という事もあって目立っており、かなりの視線を集めている。
「やっぱり美菜さんはスタイルがめちゃくちゃ良いよね、羨ましいな」
「別に恵美だって負けてないと思うけどな」
確かに身長は美菜先輩に負けているが、恵美はかなり小顔なため実際よりも身長が高く見えるのだ。
すると俺の言葉を聞いた恵美は顔を真っ赤にして口を開く。
「も、もう急に何を言い出すのよ、突然そんな事を言うなんて卑怯だよ。でもありがとう」
恵美は綺麗な笑顔でそう感謝の言葉を述べ、俺はそんな恵美の姿にしばらくの間見惚れてしまった。
そんなやり取りをしているうちに3年5組の創作ダンスは終わりを迎え、次のクラスへの発表へと移る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
全ての競技を終え、ついに星綾祭閉会式の時間がやってきた。
体育の部の競技の得点に、文化の部の展示と演劇の得点を足したものが総得点になるシステムになっているわけだが、果たしてどこのチームが1位になるのだろうか。
わくわくしながら結果発表を待つ俺達だったが惜しくも2位という結果に終わってしまう。
「2位か……ちょっと残念」
「せっかく演劇は1位になれたのにな」
「来年こそは1位を狙いたい」
閉会式が終わった後、俺達はそんな事を話しながら教室へ戻り始める。
ちなみにこの後は自由参加の後夜祭があるため、実行委員会と運動部に所属する生徒は残って校庭の後片付けと会場準備をするらしい。
恵美と話しながら教室へ戻っていると俺達を探していたらしい美菜先輩がやってきた。
「なあ、河上。ちょっと大切な話があるんだが少しだけ時間をくれないか?」
「大丈夫ですけど、一体どうしたんですか?」
「……ちょっとここでは話せないから向こうで話そう。悪いが和人は教室に戻っていてくれ」
そう言い残すと2人は屋上の方へと消えていった。
結局2人は後夜祭の開始時間ギリギリになるまで戻ってこなかった。
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