第8話 ピクニック
約束の土曜日になった今日、俺と夏海ちゃん、西条先輩の3人はふれあい公園へピクニックに来ていた。
バスから降りて公園に到着すると入り口には綺麗な花畑が広がっていて夏海ちゃんは大はしゃぎだ。
「わー、綺麗なお花がいっぱい」
「本当だ、カラフルでめちゃくちゃ綺麗じゃん」
「そうだろう、この公園は私の一押しスポットなんだよ」
そんな事を話しながら3人で手を繋いで公園をゆっくりと散策し始める。
今日が土曜日という事もあり公園内はたくさんの人達で溢れかえっていた。
特に家族連れで来ている人達が多く子供達が広場の芝生の上を元気よく走り回っていたり、父親とキャッチボールしているような光景が目に飛び込んでくる。
「夏海も走る」
「転んで怪我するんじゃないぞ」
「うん、分かってるよパパ」
そう言い残すと夏海ちゃんは芝生の上で元気よく走り始めた。
「あっ、そうだ。夏海ちゃん、これを持って来たんだけど使うかい?」
「うん。美菜お姉ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
夏海ちゃんは西条先輩がカバンから取り出したフリスビーを受け取ると投げて遊び始める。
「夏海ちゃんは元気いっぱいだな」
「ですね、一体誰に似たんだか」
そんな話をしながら西条先輩と2人でベンチに座って夏海ちゃんを見守る。
それからある程度時間が経って疲れてきたのか俺達の座っているベンチに向かって夏海ちゃんは駆けてきた。
「パパ、喉渇いた」
「ほら、お茶だぞ」
俺はリュックサックから夏海ちゃんの水筒を取り出すと、コップにお茶を入れて差し出す。
「ありがとう」
動き回ってよっぽど喉が渇いていたのか、夏海ちゃんは俺から受け取ったお茶を一気に飲み干したのだ。
「向こうに遊具があるみたいだけど、そろそろ移動する?」
「うん、行きたい」
「よし、行こう」
俺がそう提案すると夏海ちゃんも行きたいと言い始めたので遊具のあるエリアへ移動する事にした。
そして遊具エリアへ移動した瞬間、夏海ちゃんは目を輝かせて遊び始める。
ジャングルジムに登ったりローラー滑り台を滑ったり、ふわふわドームで飛び跳ねたりと本当に楽しそうだ。
「夏海ちゃん楽しそうですね」
「ああ、見てるだけで癒されるな」
「確かに癒されるのは間違いないです」
先程と同じように2人で遠目から見守っている俺達だったが、楽しそうな夏海ちゃんの姿にほっこりさせられていた。
しばらくして昼の時間になったため俺達は芝生の上にレジャーシートを広げてお昼の準備をする。
西条先輩はカバンの中からお弁当箱を2つ取り出し、それぞれ俺達に差し出す。
「小さい弁当箱が夏海ちゃんで大きいのが水瀬の分だ」
「ありがとうございます」
「美菜お姉ちゃん、ありがとう」
早速弁当箱を開くとそこにはハンバーグとタコさんウィンナー、ブロッコリー、だし巻き卵など、色とりどりのおかずが並べられていた。
どれも非常に美味しそうであり、食欲を思いっきりそそられる。
「全部私の手作りだからな、ゆっくり味わって食べてくれよ」
「いただきます」
夏海ちゃんは遊び疲れてお腹が空いていたのか凄い勢いで食べ始めた。
「美菜お姉ちゃん、美味しいよ」
「そうか、それは良かった。朝早く起きて頑張って作った甲斐があったな」
夏海ちゃんからの美味しいという言葉を聞いた西条先輩はめちゃくちゃ嬉しそうな顔をしている。
俺も実際に食べ始めてみたが、見た目通り味もめちゃくちゃ美味しく大満足だ。
「……料理がめちゃくちゃ上手い西条先輩ならいいお嫁さんになれそう」
「なっ!? 水瀬は急に何を言い出すんだ」
俺がボソッとつぶやいた言葉が西条先輩には聞こえてしまっていたようで顔を真っ赤に染めて慌て始めた。
「あっ、ごめんなさい。つい本音が漏れてしまいました」
「ほ、本音だと!? お前は私に嫁になれと言うのか……ま、まあ水瀬の嫁にだったら喜んでなってやってもいいが」
後半は声が小さ過ぎて何を言っているのか全く聞こえなかったが、何か凄まじい勘違いをさせてしまった気がする。
「あれ? 美菜お姉ちゃん、顔が真っ赤になってるよ」
結局西条先輩は夏海ちゃんからそう声をかけられるまで完全に自分の世界に入り込んでしまっていた。
それからしばらくして昼ごはんを食べ終えた俺達は再び散策を開始する。
池の近くを通りかかったところ白鳥が泳いでいる姿が目に入ってきた。
「わー、鳥さんだ」
夏海ちゃんは白鳥を見るや否や興奮気味に近づいていく。
「ここでは白鳥に餌やりができるみたいだな」
「あっ、本当だ。向こうで餌を売ってますね」
白鳥の餌を売っているガチャガチャが目に入ったらしい西条先輩はそうつぶやいた。
俺は早速白鳥の餌を購入すると、池のそばで白鳥を見つめていた夏海ちゃんに手渡す。
「ほら、これで白鳥に餌をあげたら喜ぶと思うぞ」
「パパ、ありがとう」
俺から餌を受け取った夏海ちゃんは嬉しそうな顔をして興奮気味に餌をあげ始める。
すると夏海ちゃんの近くに白鳥達がどんどん集まってきた。
「パパ見て見て、鳥さん集まって来たよ」
「多分お腹減ってたんじゃないかな」
そんな会話をしながら餌が無くなるまで俺達はあげ続ける。
餌が無くなった途端、興味を無くしたように離れていく白鳥達に現金な態度だなと思う俺だったが夏海ちゃんは満足したようだ。
そしてその後も夏海ちゃんが帰りたいと言うまで公園を3人で満喫するのだった。
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