第7話 ご褒美
とある日の授業終わり、帰り道で偶然西条先輩と会った俺は一緒に雑談をしながら帰宅していた。
「そうか、夏海ちゃんはついに九九を暗記したのか」
「はい、頑張って母さんと一緒に勉強したみたいで、この前までは結構苦戦してたのに昨日遂に九の段までスラスラ言えるようになりました」
夏海ちゃんは毎日一生懸命勉強を頑張っており、昨日ついに九九をマスターしたのだ。
「じゃあ夏海ちゃんに何かご褒美が必要ではないか?」
「確かにめちゃくちゃ頑張っていたので何かご褒美をあげたいくらいです」
「……なら、夏海ちゃんへのご褒美として今度の土曜日3人でふれあい公園へピクニックにでも行くのはどうだ?」
西条先輩がそう提案してきたのを聞いて、俺は悪くない話だと思い始める。
「それはめちゃくちゃ楽しそうですね。きっと夏海ちゃんも大喜びすると思いますよ」
「また夏海ちゃんに行きたいかどうかを確認したらチャットアプリで教えてくれ」
俺の乗り気な様子を西条先輩は知ると楽しげな足取りで歩き始め、別れるまでテンションが高めだった。
そして家に帰ると家の奥からドタドタと走って出てきた夏海ちゃんから出迎えられる。
「パパ、おかえり」
手に鉛筆を持っている事を考えるとさっきまで勉強をしていたのではないだろうか。
「ただいま、夏海ちゃん。さっき西条先輩、時々うちに来る背の高いお姉ちゃんから今度の土曜日にピクニックへ誘われたんだけど行きたい?」
「夏海、行きたい」
俺がそう聞くと夏海ちゃんはテンション高く即答した。
「オッケー、じゃあ西条先輩にも行くって伝えておくよ」
俺は自分の部屋へと歩いていきながら西条先輩へ、夏海ちゃんも行くって言ってますよとチャットアプリでメッセージを送る。
すると1分もしないうちに西条先輩から返信が返ってきた。
内容は”了解した、お弁当とかは全部私が準備するから楽しみに待っていてくれ(o^^o)”と書かれており、西条先輩には珍しく文の最後には普段は全く使わない顔文字まで付いている。
その文面からは嬉しさが滲み出ており、めちゃくちゃ喜んでいる様子がこちらに伝わってくるようだ。
メッセージに返信してスマホを机の置くと、俺は今日の課題と明日の授業の予習をやり始める。
今の時代に夏海ちゃんが現れた事で俺は将来結婚し子供まで生まれてくる所までは分かったが、幸せに過ごすためには良い大学を出て良い会社に就職する必要があると言えるだろう。
そんな事を考えながらしばらく勉強をしていると部屋の扉がノックされた。
「お兄ちゃん、ただいま。それとご飯できたって」
どうやらご飯ができたらしい事を部活帰りの凛花から聞いた俺は勉強道具を一旦片付けてダイニングへと降りる。
席に着いて5人で食事を始めると夏海ちゃんがテンション高く口を開く。
「この卵焼き、おばあちゃんと一緒に夏海が作ったんだよ」
「うまくできてるじゃん、めちゃくちゃ美味しいよ」
「夏海ちゃん、凄いね」
俺と凛花は卵焼きをパクりと一口食べてからそう絶賛した。
「今日は夏海ちゃんが料理を手伝ってくれたから助かったわ」
母さんは嬉しそうな表情でそう話していて父さんは感心しており夏海ちゃんも褒められて嬉しくなったのかニコニコだ。
「……そう言えばめちゃくちゃ今更だけど、夏海ちゃんは何年後から来たんだ?」
ご飯を食べながら俺は前々から気になっていた質問を夏海ちゃんにぶつけてみた。
「えっとね、確かパパが33歳だったと思うから33歳引く今のパパが17歳で……16年後だと思う」
なるほど、という事は夏海ちゃんは俺が25歳の時に生まれた子供という計算になるため、少なくとも後8年後には結婚しているらしい。
「へー、って事は和人は25歳くらいまでには結婚してるのね」
「25歳か、俺よりも全然早いな。大体大学を卒業して就職してから2年後くらいか?」
そんな夏海ちゃんの言葉を聞いた母さんと父さんは嬉しそうに2人でそんな事を話している。
「……ちなみに未来で私はどうなってるのかしら?」
俺達の会話を黙って聞いていた凛花が夏海ちゃんにそう尋ねた。
「うーん、未来で凛花お姉ちゃんには全然会った事が無いからわかんない……」
「全然会った事が無いって事は未来の凛花は県外とかで就職してるのかな」
「あー、あり得るかも。実は将来県外で就職するのもいいかなって少しだけ思ってるくらいだし」
夏海ちゃんの言葉を聞いて色々と未来の様子が分かってきた俺達は色々と考察をしながら盛り上がる。
「じゃあ、私はどうなってるの。夏海ちゃん」
「あっ、俺もどうなってるのか気になる。16年経ってもまだ髪残ってるよな……?」
「それなら俺もどんな仕事をしてるのかとか教えて欲しい」
それから自分達の未来が気になり始めた母さんや父さん、俺は夏海ちゃんにその後も色々と質問をするのだった。
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