第2話 幼馴染と先輩
「どうしたの? 朝から疲れてるように見えるけど」
「……朝から色々あったんだよ」
「何か分からないけど、とりあえずお疲れ様」
俺のクラスである2年5組の教室に着いて早々友達とも話さずに机の上で伏せて寝ていた俺に声をかけてきたのは同じクラスに所属する幼馴染で青髪ショートの
恵美は昔から近所に住んでいて小学校からずっと同じ学校に通っている。
中学生までは一緒に学校へ通っていたが、高校生になってからはお互いに恥ずかしくなって一緒に通う事は無くなっていた。
だが未だに仲は良く、こうして恵美から話しかけてくる事も多い。
「……まさかこの歳でパパになるとは思わなかったよ」
「えっ、和人君それってどういう事!?」
ついついそう言葉を漏らしてしまう俺だったが、恵美はめちゃくちゃ大きな声をあげた。
「おい、馬鹿。みんな俺達の事を見てるじゃん」
恵美のあげた叫び声によってクラス中の視線は今俺達に集まっている。
「あっ、ごめん……それよりパパってどういう意味?」
「話すと長くなるからまた昼休みに説明するよ。もうすぐ授業も始まるから今は一旦席に戻れ」
そう言って俺は恵美を席に戻らせて昼休みになるまでひたすら真面目に授業を受けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして昼休みになったタイミングで恵美は俺の机へとやってきて口を開く。
「じゃあ朝の言葉の意味を聞かせてもらうよ」
「分かったけど、ここじゃ話しづらいし屋上に行こう。ついでに昼ごはんもそこで食べようぜ」
俺は学校の屋上へ恵美を誘って2人で並んで歩き始める。
2人で廊下を歩いて屋上へ向かっていると小学時代に通っていた書道教室で知り合って今でも交友のある黒髪ロングの
ちなみにその書道教室には恵美も通っていたため、西条先輩とは当然ながら顔見知りだ。
手にお弁当を持っているという事は誰かと一緒にこれから食べにいくのだろうか。
「やあ、水瀬に河上。こんにちは」
「西条先輩お疲れ様です」
「美菜さん、こんにちは」
西条先輩に声をかけられた俺達はそれぞれ挨拶をした。
「2人きりでどこへ向かってるんだ?」
「和人君と屋上に向かってるんですよ。そこで
「
恵美の意味深な言葉に西条先輩は何かを勘違いし始めたのか思いっきり慌て始める。
「おい、水瀬ちょっと来い」
「い、痛いですよ西条先輩」
「あっ、ちょっと……」
恵美の静止を無視した西条先輩に無理矢理引っ張られて廊下の端まで連れてこられた。
「お前まさか河上に告白するんじゃないだろうな? 悪い事は言わないから辞めておけ、絶対失敗するしお互い不幸になるのは目に見えてるから今すぐ考え直せ……お願いだから」
肩を思いっきり揺さぶられながら懇願するような表情をした西条先輩からそう言われた事を考えると、やはり勘違いされているようだ。
「ち、違いますよ。告白じゃなくて俺がパパになったって話をしようとしてるだけですって」
「なに、パパになっただと!? おいそれはどういう事だ」
俺の言い方が悪かったせいかまた誤解をされたようで西条先輩から再び肩を思いっきり揺さぶられる事になった。
「西条先輩にも全部説明しますから一旦落ち着いてください」
なんとかして西条先輩を落ち着かせた俺は恵美とともに屋上へと向かう。
ちなみに西条先輩は友達とご飯を食べる事をわざわざキャンセルしてまで屋上へ着いてきている。
「それでパパになったとはどういう事だ……ま、まさか誰かを妊娠させたんじゃないだろうな」
「ちょっと、それ本当なの!? 相手はどこの誰?」
「違います、全然違いますから」
屋上に到着し、興奮気味の西条先輩とその言葉を真に受けてしまった恵美が騒ぎ始めるが、俺は全力で否定した。
それから俺は今朝起きた事を包み隠さず説明していく。
「未来から来た娘だと……にわかには信じ難いな」
「逆の立場なら多分俺も信じられないと思います」
俺の説明を聞いていた西条先輩はそう声をあげた。
「でも昨日までいなかったはずの女の子が急に現れたんじゃ、信じたくもなるね」
「俺に結構似てたから余計に信じるざるを得なくなったよ」
西条先輩は未だに信じられないという顔をしているが、ひとまず俺が誰かを妊娠させたというとんでもない疑惑に関しては晴れたようだ。
「でも未来から来た和人君の娘って事はさ、誰か母親がいるって事だよね? 一体誰なんだろう……」
「確かにそれはめちゃくちゃ気になるな……未来の母親は案外身近にいたりしてな」
「さっきも話しましたけど、ママに関しての記憶は完全に抜けているみたいなのでそこは全然分からないんですよね」
俺も母親が誰なのかはめちゃくちゃ気になるところだが、残念ながらそこは分かりそうにない。
「私が母親って可能性も考えられるよね。って事はひょっとして和人君と私の子供なんじゃ……」
「もしかして私と水瀬の子供って可能性は無いよな……いや、十分あり得るのではないだろうか」
恵美と西条先輩は何やらぶつぶつとつぶやいているが、声が小さすぎて全く聞こえない。
「とにかくこれで俺からの説明は終わりです、もう昼休みの時間も残り少なくなってきたので昼ごはんを食べましょう」
「そうだな、そうしようか」
「あっ、もうそんな時間になってる」
俺達は急いで昼食を食べると西条先輩と分かれて教室に戻り、昼からの授業も真面目に受けるのだった。
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