第6話 家族
途端、カーリアの白肌が焼け爛れた。ボコボコと音を立てて赤黒く沸騰していく。
曇天が裂け、太陽が蘇った。
「…………ぐッ!」
突然の激痛に少女を殺す手を引く。
白昼堂々の殺人。
このままでは騒ぎになってしまう。太陽の下では例えイモータルといえど、命取りになる。
いや、それで良いのかもしれない。
両親は殺した。復讐は果たされた。あとはこの少女を殺すだけだ。そして、いっそ私も死んでしまおう。
カーリアは再び爪を構え直した。
曇天から射す光が彼女を焼く。火傷が徐々に広がり、彼女を蝕んでいく。
ふと少年の顔が頭によぎった。
火傷に覆い尽くされた手が震える。
少年。死にたい私を殺してくれた、優しいお兄様。今一度会いたい。会いたくて仕方がない。そのためには、まだ死ねない。
放心する獲物を目の前に、カーリアは暗闇へと消えた。いつか必ず殺しに来る。そう誓って。
彼女はイモータルになりながらも未だ死ねずにいた。
◯◯◯
「カーリア! 僕の可愛い妹! いったいどうしたんだ!」
館に戻ったカーリアは満身創痍に焼け爛れていた。ローブから露出した箇所は特に酷く、イモータルの不死性がなければ既に息絶えていたことだろう。
肖像画の並ぶ玄関ホールの中心で、ついに力尽き倒れた。
不死者の能力により徐々に回復はしているが、それもほんの僅かなものだ。
「お兄様……私」
「喋るな妹よ。今父さんが癒薬を持ってくる」
「お兄様……私、あなたに会いたかった。とても、とても。私……ワタシに会った。私……また死ねなかった」
「カーリア、君を死なせはしない。絶対に。一緒に一族の悲願を見届けよう。だから生きてくれ! 生き返ってくれ!」
カーリアの手を握る少年の手。
それはやはり、温かかった。
IMMORTAL えすの人 @snohito
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