第4話 日中
カーリアは日中に街を歩いていた。
日中にイモータルが活動するには、アンチソーラレイと呼ばれる薬が必須であった。少年が調薬して作ったこの日焼け止めがあれば、ある程度の直射日光を防ぐことができる。それでも念のため、日陰や反日陰を好んで移動しなければならなかった。
街を歩きながら、彼女は今夜の獲物を選りすぐる。
彼女の好みは自分と同じくらいの若い娘だ。なぜそうなのかは、自分でもわからない。他と比べて味がいいわけではない。彼女には味の区別はつかない。ただ何となく、若い娘を殺したいのかもしれない。
無意識のうちに、自分を重ねていたとも。
街道に並ぶマーケットの屋台は今時間、買い物をする女が多い。日陰を歩きながら視線をあちこちに配る。
「あー、おねーちゃんなんでここにいるの?」
「わたしたちについてきちゃったの?」
不意に声をかけられた。幼い声だ。無邪気で活力がある。
声の方を向くと、彼女の背の半分もないくらいの子供が二人、こちらを指差して笑っていた。
「おはなばたけでまっててって、いったでしょ?」
「ほら、こっちこっち!」
訳もわからず子供たちに手を引かれる。日陰から日光に晒され、皮膚が爛れるように熱い。その痛みに、咄嗟に子供たちの手を払う。
「……ッ!」
「おねーちゃん、どうしたの?」
「おねーちゃん、げんきないみたい」
心配そうに見つめてくる子供。イモータルは肌色が白い。元気がないとはそういうことだろうか。だとしたら、ここでは子供たちに合わせた方がいいだろう。大人を呼ばれたのでは、きっと騒ぎになってしまう。
下手に身動きの取れない日中の騒ぎは、イモータルに死をもたらす。
それに、子供たちは自分を誰かと人違いしているようだ。自分と同じくらいの歳か身なりの誰かが身近にいるのだろう。上手くいけば、今夜の獲物が見つかりそうだ。
「ううん。何でもないの。ごめんね。お花畑に戻ろっか。でも今日はいい天気だから二人とも日陰に入ろうね」
「よかった! おねーちゃんげんきだ!」
「えへへ! おねーちゃんだいすき!」
そうして二人の子供は跳ねるように花畑へ駆けて行った。大好きなお姉ちゃんのもとへ、死神を連れて。
あれほど目障りだった天気はカーリアへ加勢するかのように陰って空を覆った。
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