第3話 見解

翌日。


「コメントで私の作品が盗作だと言われた件についてアドバイスをお願いします」


には・・・・・・。


奈良さん。

千葉さん。

山城さん。

オッキーさん。


がコメントを投稿してくれた。

肝心の京都さんはすぐさま参戦してくると思ったが、昨日の最後のコメント「白々しいですね。それはアナタが一番ご存じなのでは?」以降何も音沙汰がない。


そう言えば、東京都庁さんのコメントも来てないな。


その代わりと言うのは変だが、北海きたうみと名乗る人物からもコメントが来ていた。

初めて聞く名前だ。


北海さんはタイトルが穏やかでない事もあって、興味をひかれてやって来たのだろうか?


私はコメントを一つ一つ開いていった。


奈良さんのコメント。

「 転生イケメン、拝読しました。とても独創性にあふれる作品だと思います。実は私BL系の作品は結構読んでいる方なのですが、続きがとても気になるほど斬新です。私の知る限り神奈川さんの作品は盗作などでは無いと思います」


奈良さんの暖かみのあるコメントを読んで、ひとまず私は胸をなでおろした。


「ありがとうございます。盗作疑惑を否定して下さっただけでは無く、作品も楽しんでくださった様で嬉しいです」

と返信した。


続けて千葉さんのコメントを開く。

「作品拝見しました。僕も見た感じ知ってる作品は無いですね。ただ神奈川さん。BL系の作品はカクプラでは需要が少ないですよ?神奈川さんの今までの作品は男性キャラと女性キャラの割合がバランス取れていたと思うのですが、その点が気になりました。ハッキリ言ってこの設定はオススメできません」


千葉さんのコメントはいつも参考になるが、少々説教臭い。


「ご指摘ありがとうございます。ただ、今作は私が温めてきたアイデアを挑戦したいと思っておりまして。腐った女子高生と暖かく笑って頂ければ幸いです」

と返信。


山城さんは・・・。

コメントではなく、スタンプだった。

カクプラのメガネをかけた女の子のマスコットキャラが、ジーとこちらを見て「いつも見てますよ」と背景に文字が浮かび上がっているスタンプだ。


えーと・・・意味が分からんのだが?


「山城さん。スタンプありがとうございます。出来ればコメントで意見を伺いたいのですが・・・」

と送ってみる。


すると1分もしない内に山城さんから返ってきた。

探偵のマスコットキャラが虫メガネを光らせ、「これは興味深い」とつぶやいているスタンプだ。

続けて例によって転生イケメンの文章のいくつかをコピペした送られてきた。


いや、確かにコメントをお願いしたが、私の小説を断片的にコピペして送り返されてもどう判断しろと!?

何だか山城さんの相手をしていてはらちが明かない気がしてきたので、次のコメント・・・オッキーさんのコメントを開く。


「盗作じゃないでしょ?少なくとも俺は知らん」


あれ?オッキーさんはいつもテキトーなコメントかスタンプを押すだけだが、一応本文は読んでくれたみたいだ。

少なくとも私の盗作疑惑は否定してくれている。


「オッキーさん。盗作疑惑を否定して下さってありがとうございます」

とりあえず私はそう返信した。

何だか私の返信までオッキーさんの様にテキトーになっている気もするが、気のせいだろう。多分。


最後に北海さんのコメントを開く。


「盗作かどうかとの話ですが、単刀直入に言います。俺、どこかで見た覚えがある作品との印象を受けました。アナタは本当に身に覚えが無いのですか?本当にパクって無いのですか?」


北海さんのコメントを読んで私は不快感を覚えた。

しかし、これは私から持ち上げた議題だ。

私には身に覚えが無いが、疑惑元の作品を知っているなら教えて欲しい。


「初めまして。北海さん。ご指摘ありがとうございます。私としては全く身に覚えはございません。しかし、その見覚えのある作品についてご存じでしたら、教えていただけないでしょうか?」


しばらくして北海さんの返信がくる。


「残念ながら作品名までは思い出せません。けれどアナタはカクプラで人の作品はちゃんと読んでいるのですか?まずはそこから始めましょう。これは私の感想なのですが、アナタは自分の作品を人様から読んでもらっても、その人の作品をお礼に読み返すことはしていらっしゃらない様ですね?」


・・・は?

北海さんは何だか強引に話の論点を変えている。

そもそも何故そう言う話になるんだ?


私はどう返信したものか困ってしまった。


カクプラで私は結構な量の小説を読んでいる。

その中で「転生イケメン」と同じものは無かったはずだ。

当然だ。そもそもコレは私のオリジナル作品なのだから。


次に北海さんが指摘した「作品をお礼に読み返す」ことはしていたかどうか考えてみた。


東京都庁さんの作品は、全て読んでいる。

彼の作品はミステリー物が多く、ラブコメを書いている私とは異なるジャンルの書き手だが、常に上位ランカーにいるだけあって夢中で読んでしまう。


次に奈良さん。

奈良さんは結構BL系の作品が多い。

作品数もそこまで多くないので、奈良さんの作品は全て読破している。

私も実を言えば腐女子なのだが、今まで恥ずかしさが勝ってしまいこの手の作品には手を出せずにいた。

実を言うと今回「転生イケメン」に挑戦したのも、奈良さんに感化された部分も多い。


千葉さんはどうだろう?

いくつか読ませてもらった事があるが、カクプラの中堅作家だけあって、中々の文章力とストーリー構成力、それにキャラの魅力を描く力はあると思う。

ただ・・・千葉さんも私と同じラブコメをメインで書いている様だが、少々私の好みと方向性が違う事もあって参考程度にしか読んでいない。

千葉さんの作品に関しては読んだ量としては全体の30%と言った所だろうか?

ただ、一応読んで感心したり、勉強になったと思った部分に関してはコメントもさせてもらっているし、応援スタンプも押している。


山城さんの小説は読んだ事が無い。

これはとても単純な話で、そもそも山城さんは小説を投稿していないのだ。

一昨日、私の作品の文章の一部分を切り取ってコピペしたコメントをもらい、山城さんのプロフィールを確認した。

なお、いくつかのブックマークはある模様。

「転生イケメン」もブックマークしてくれている。

つまり、山城さんは純粋な読み専門と思われる。


最後にオッキーさん。

オッキーさんは割と満遍まんべんなく色々なジャンルの作品を書いている。

ただ・・・何て言うか、あまり読んでて面白くないのだ。

文章力も、ストーリー構成力もキャラの魅力も余り感じない。

ただ、コレは私の一個人の主観であるから、この評価は必ずしも正しいとは言えない。

と言うのもオッキーさんは意外にもランキングはそこそこ上位にいるのだ。

単に私の評価と世間の評価がズレているだけなのだろうか?

いずれにしろ、オッキーさんの作品を私はほとんど読んでいない。


それを踏まえて北海さんに返信コメントを書く。

「ご指摘の通り、読んで応援して下さった方の全ての作品を読破はしておりません。しかし、それと今回の盗作疑惑は関係ないと思えるのですが・・・」


北海さんからコメントが返ってくる。

「盗作疑惑とは別の話です。俺はマナーの話をしているんです。読まれたら読み返す。読み返しです!」


北海さんはぼう半沢直樹みたいなセリフを言い出した。

正直これ以上は付き合いきれない。


「貴重なご意見ありがとうございます、北海さん。今後の活動の参考とさせて頂きます。もし後日、作品名を思い出されましたら、教えていただけると助かります」


私はとりあえずそう返信して、「今日はもうお前帰れ」的なニュアンスを遠回しに伝えた。


と、ここで山城さんからスタンプがあった。

ドラゴンのキャラのマスコットが満足げに「良いものを見せてもらった」と語っているスタンプだ。


あの・・・。

山城さん?

私としてはとても切実な話で見世物じゃ無いんだよ?


その日は山城さんのスタンプを最後にコメントは無かった。


てっきり京都さんが猛烈な勢いで批判コメントをしてくると思っていたので、少しだけアッサリ終わったというのが私の率直な感想だった。


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現状


東京都庁:未登場


千葉:盗作説に否定的


山城(やましろ):肯定も否定もしいてない


北海(きたうみ):どこかで見覚えがあると証言


オッキー:盗作説に否定的


奈良:盗作説に否定的


京都:神奈川(木刈カナ)を告発


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