第25話 神使の契約
―白狐に籠愛されたそよが村人に殺され、村は廃れ人々は土地を捨てた。霊力を失った九十九は狭間にきた―。
「これが、俺が
「……」
「九十九は悪くないニャー」
三毛猫シャルルは呟く。
「……シャルルは知っていたのね?」
手の甲でグイっと涙をふき一樺は聞く。
「僕は九十九さんの神使の
一樺は三毛猫シャルルをギュッと抱きしめた。
「ちょっと、一樺! 抱きしめる相手が違う~。九十九さんが禍々しい狐目で僕を見ているニャー」
「シャルル……。ずっと九十九さんのそばにいてくれたんだね。わたしからもお礼をいわせて。ありがとう」
「……僕が好きで九十九さんと一緒にいたんだ」
照れながら三毛猫シャルルはいう。
「世の
「でも契約は絶対なんだ、そこでは干渉しちゃいけない契約だった……。そよだって受け入れていたのに……。それにまた、俺は怨まれ、狙われて一樺に迷惑かけてしまうかも―。」
うつむき辛そうな顔をする九十九。
「大丈夫です。わたしは気にしない。そんな時は受けて立つわ。本当に稲の害虫は九十九さんのせいなの? その村は遅かれ早かれ消滅していたと思う。誰かの犠牲の上での平和なんて、無理でしょう。九十九さんは死ねない
一樺はポンと九十九の肩を叩きニコッと微笑む。それに応えるようにいつもの九十九に戻り言った。
「さすが、俺の嫁」
「いやまだ、返事してないし」
「ふっ……」
三人で顔を見合わせ笑った。
***
「今日は遅くなるといけないので、帰るね。じゃあ、また来週バイトに来ます」
「ありがとう、また来週」
一樺が家に帰ったあと、三毛猫シャルルは九十九にたずねる。
「あと、一樺に言い忘れていることあるよね?」
「んーコンコン、それについてはまた今度にでも、説明するとしよう」
「ポンポコ……」
よぼよぼの老狸がコタツテーブルの隅に座る。先ほど、霊力を奪われた狸だ。
「んあ? なんだ妖狸の野郎、どら焼きでも欲しいのか?」
どら焼きを妖狸の前に置き、九十九はメガネをかけ、常世国に報告書を書くため巻物を手に取り椅子に座る。シャルルは頬を膨らまし妖狸に近づいた。
「お前のせいで、しばらく猫のままだ。今日からきみが看板狸だ。なんなら店の前に立って客引きでもするかニャー? 商売繁盛で縁起いいよね」
さて、今回は九十九さんの過去が明らかになりましたね。そろそろ最終回に向かってまとめようとしています。29話の予定です。もう少しだけお付き合いください。まとまるかな。
Case6 妖狸がアンティークショップの看板狸になる
……つづく。
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