第22話 一樺の疑問
ここは
「コンコン、そんなに思い詰めるな一樺、俺への返事はゆっくり考えたらよかろう。百年位待つつもりだ。それより休憩しよう。弐ノ国産紅茶はいかが?」
前回、うだうだ悩んだものの無事に一樺に求婚できて満足したアンティークショップ店長で
「きゃーっ。九十九さん、ああ、はい」
びっくりした、九十九さんすぐ後ろ。この半妖、求婚しておいて気まずくないのかな? そういうわたしも狭間一丁目の透ノ間アンティークショップ九十九にバイトに来ているが……。
「俺は一樺が作ってくれた商談用のテーブルでお茶をいただこうとする」
「では、わたしも商談用のテーブルに座ります」
「一樺、どら焼きもどうぞ」
「はぁ……」
(いつもなら九十九さん、妖狐色男できらきらしいけど、今の状態はわたしに懐いた子犬、いや子狐のよう)
「あのー、そのー。九十九さんはわたしのことをどの辺がお気に召しました?」
「コンコン、一樺と話していると楽しい。それによく泣くが、素直で一生懸命働いて、あとはかわいい所かな……。俺にツッコミ入れるところもいい……照れ」
(金髪大陸ハーフ王子さま顔で照れている。今まで、口が悪かったから、なんか調子狂うなぁ……でも、肝心なこと聞いてなかった)
「こんな年の離れた九十九さんからしたら、ひよっこのわたくしに求婚ありがとうございます。ですが、もしも、九十九さんがわたしのお婿さん候補とするならば―」
「するならば?」
キョトンとする九十九。
「わたしは九十九さんのこと何もしらないので返事はそれからにしたいです。―聞いてもいいですか?」
「コンコン、まずはTeaTimeだ。ささ、紅茶が冷めてしまう。話はそれからだ」
窓から日差しが差し込み、金色の髪を輝かせながら九十九は紅茶を優雅に飲み、どら焼きをしあわせそうに食べた。一樺もどら焼きを頂く。
(いつも思うが、その組み合わせ変だけど?)
「大人の余裕、さあ、一樺が知りたいなら俺のすべて教えよう。どうぞ~。モグモグ」
うれしそうに二つ目のどら焼きに手を伸ばす九十九。
「……まず、九十九さんは何歳?」
「‼ うぐぅ。一樺……。とと年上に年齢聞くの、ししし失礼じゃないか? それはセクハラだぞ。……それに二十四歳って言っているじゃないか……モグモグ」
焦る九十九は冷や汗をかき胸ポケットからハンカチを取り出し額の汗を拭く。
「大陸のハーフって仰ってましたが、どこの大陸で生まれたの? 幼少期はどのように過ごしましたか? 両親はどちらにお住まいですか? わたし、結婚となったらどこに挨拶に行けばいいの?」
「‼!」
口にどら焼きがはいったまま九十九は固まる。
「いくら異常にモテるからって、あなたは人間界生まれなのに、どうして狭間に住んでいるの?」
「……そ……」
「あなたは長生きだけど、今まで恋人や結婚した人はいたの?」
「……う……それは……」
「将来、夫婦になるのだとすれば、全部正直に嘘偽りなく歴史年表作って洗いざらい話してください。妖狐だからってわたしを騙すのは、なしですよ」
すると青ざめた九十九は耳を塞いで立ち上がり、脱兎、いや脱狐のごとく店の外に逃げた。
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