第38話 祈り

「神官長、私はBBの傷はスキルによって完治したと思う…の」


 あれ?もしかして師匠マスターの魔法の効果切れてきている?

 ブレイブは長時間持つタイプの魔法では無い可能性があるな。


「良い推測ですね、ですが『神眼』で判別できない以上、他の可能性も考えると良いと思います。

 私達には魔法もスキルも馴染みがありますが、BBさんにはありません。ひょっとすると私達の知らないアイテムの存在なども考えられるかもしれませんよ?」


 Fは特に師匠マスターの様子を気にすることなく接している。ブレイブの影響を受けてないAを知っているから言葉遣いに寛容なのなもしれないな。


「アイテム?」

「アイテムはあくまで例です。

 『神眼』がうまく作用しない事も稀にあると私の師も言っていましたし、魔法やスキルだけに着目するのではなく、もっと広い視野で検証すべきでしょう」

「それでは神官長なら何と考え…る?」

「大量の魔石と回復魔法、または超回復の薬あたりか」

「でも」

「ちょっと待って下さい、A。

 BBさん、Aがこうなってしまってはしばらく時間がかかります。

 ベルフェ様の像にお祈りは済ませましたか?」


 AとFの白熱する議論を聞いておきたい気もするが、このタイミングで俺に話をふるということは俺がいると話しにくい事でもあるのかもしれない。


 ここは空気を読んでFに従うのが良いだろう。


「お祈りですか?いえ、まだです」

「私達は日に2回、像の前で祈りを捧げます。

 私達が話している間に一度目の祈りを捧げてきてくれませんか?

 本来祈りは朝方と夕方にするのが望ましいのです」

「なるほど、作法などありますか?」

「片膝を地に着け、両手を胸の前で組み目を瞑るくらいです」

「わかりました、ではちょっと済ませて参ります」


 Aを見ると腕組みをして不服そうな顔でFを睨んでいた。


 なるほど、周りが見えなくなる猪突猛進タイプだとは思っていたがこういう知識面でもそうなのか。

これがAの強さなのかもしれないな。


 俺は二人に会釈してその場を立ち去り、ベルフェ像へと向かった。


◇◆◇


 俺はベルフェ像に向う途中に小さな花がいくつか咲いているのを見つけ、ちょっとした墓参りみたいな感覚で小さな花束をつくりあげた。


 ベルフェ像の前に来ると参拝者は誰も居なかつまたので遠慮なく台座に近づくと献花を行う。

 そして服を着せられたベルフェ像の前で礼拝のポーズを取りゆっくり祈る事にした。


『ベルフェ様、昨日ぶりです。

…ってあれ?ベルフェ様の服装そんなでした?

もしかして日替わりで服装変わってらっしゃいます?

 ちょっとなんだか昨日よりカワイイ系じゃないですか?

 そういうのも似合うんですね、意外というか当前というか、なんだか得した気分ですよ』


 あれ、そういえば目を瞑って無いぞ。

 もう一度やり直しだな。


『それでベルフェ様、話が変わってすみませんが俺のスキルについて何か知りませんか?

 なんだか身に覚えの無いスキルを覚えてそうなんですよ。

 俺の使えるものを思い出してみますが、

―――――――――――――

神の恩寵▶共通言語

     取得経験値増加

     能力限界値突破

     オーバースキル


会得スキル▶神技 解毒

      神技 状態固定

―――――――――――――

 これであってますよね?


 恩寵は『神眼』で見破られないから、3つのスキルを覚えていると言われたのだと思いましたが、それならあと残りの1つの会得スキルとは?

 何も習得してかったと思うのですがの、Fさんの勘違いでしょうか?』


 答えは何も帰ってこない。

 まぁ当たり前か…しかしなんだろう、こうして自身に向き合える時間というのは整理できて助かるな。


『…ぁ』

『え?』

『お待たせしました』

『え、ええ!?

 べべべ、ベルフェ様ですか!?』

『そうです』


 俺はまさかの交信に成功した。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る