第34話 魔石
まだ右手はAと繋いでいる状態なので、左手で魔石を受け取った。なんだかんだ右手はふやけてしまいそうなくらい握っているのでまるで一つに繋がっているような錯覚に陥る。
「良いか、改めてもう一度説明する」
「お願いします」
「ルーン文字を刻んだその魔石は魔力を出力すれば水に変換されるようになっている、つまり何も考えなくても魔石が魔力操作を行ってくれる」
「はい」
「ただし、ルーンに刻まれた魔法しか使えない。
例えば水魔法には対象物を射るような
「なるほど」
「そしてこの魔石にはある程度の魔力を既に溜め込んである。だから魔力操作さえできれば今のBBでも水を生み出せる。魔石に意識を集中して魔力を感じてみろ」
「わかりました」
魔石に意識を集中すると全体がぼんやり光っている気がする。これが貯められた魔力?しかしなんだか光が弱い気がする。
「
「魔力操作で出力の仕方が変わるからな、特に操作していない状態ならそんなものだ」
「なるほど。次はどうすれば良いですか?」
「こうするんだ」
そういうと右手から悪寒が走るのに似たような感覚が流れ込んできた。
「う、うぉ!?」
「落ち着け」
右手から光が登ってきて左手に抜け、魔石に到達すると、魔石の光は増した。
「BBの身体越しに魔力操作をしている。感覚が何となく分かるだろう?」
「は、はい。気持ち良いものでは無いですね」
「下らん事を言ってないで集中しろ、魔石の一点から水を作り出すイメージを行うぞ」
「は、はい!」
集中すると光の中に一際輝くポイントを見つける。ここから水を作り出すのか?
「良し、口を開けろ」
「あ、あ〜ん」
俺はAがしていた事を思い出しながら見様見真似で光のポイントを口の中に向ける。
「分かってるじゃないか、そうだ、そこから水が作り出せる。そして次に魔力をこう操作する」
「あばばばゴクゴクゴクゴク」
俺はAの魔力操作を身体で体験しながら魔石から出てくる水を飲むという頭がこんがらがりそうな初体験をしていた。
「良し、これを維持していろ。手を離すぞ」
「あばばばゴクゴクゴクゴク」
Aは俺と繋いでいた右手を離した。
一瞬何か寂しさを感じたが、その瞬間に魔石から出てくる水量が増えそれどころではなくなった。
「あばばばばばばばばゴばばクばゴばクばば」
「魔力を絞るイメージで調整するんだ、制御できないと頭が吹き飛ぶぞ」
!?
そんな恐ろしい話は聞いていない!
必死に蛇口を締めるイメージで魔石に集中する。
「あばゴクゴクゴクゴク」
「ほう…飲み込みが早いな。シャレではないぞ」
「あばばばばばげげげ」
集中が切れッ!?お、溺れる!?
「魔力操作、辞め」
そ、そうだ、俺が操作してるんだよ!
Aの言葉にあわせて集中をピタッと解くと水はすぐに止まった。
「あ、頭が吹き飛ぶなんてきいてませんよ!?」
「あれは嘘だ、かなり集中できたろう?」
「ま、まぁ、できましたけど…」
「なんだ、不満そうだな?
仮に間違えて強い出力になったとしても、魔石の方向を変えれば良いじゃないか」
「たしかにそうですけど…」
「そんな事より、もう自由に扱えるんじゃないか?ちょっとひとりでできるか試してみろ」
「はい」
魔石を右手に持ちかえAが俺を通して魔石を操作した感覚を思い出し、少量の水が出るイメージで魔石に溜まっている魔力を操作する。
はじめちょろちょろ、なかぱっぱっと…自分なりに感覚を掴みながらテンポを掴む。
手のひらを濡らす程度の水はじょじょに水量を増し、蛇口をひねったような水量が地面に落ちていく。
「やるじゃないか、さすが私の奉公人だ」
「お、おぉ…ありがとうございます!」
「良し、では水を止めて左手を出せ」
「はい!」
左手を出すとガシッと力強く手を繋がれ、Aは俺の横に立った。
ん?
「良し、では次に行くぞ」
「つぎですか?魔石はどうしたら?」
「魔石はポケットにでもしまっていろ」
「ん?あの、手に集中してた方がいいんですか?」
「手は別に気にしなくて良い」
「ん?」
「いいから次に行くぞ」
「は、はい!」
え、どこに?
何で手を繋いでるんだ?
俺はAに引っぱられるようにして次の目的地に向かった。
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