5話 決着
「今、なんて――」
聞き直す必要などなかった。シオンにもその言葉は届いていた。
ベルベルク。それはシリウス――アリア――を
その昔、彼から聞いたことがある。その剣で斬られたものは
それが望みだったのではないか? 消えたいと何度も願った。シオンの中で、死ぬことに対しての欲が
「ベルベルク――起動」
しかし、そんなことを考えている暇などなかった。攻撃は常にどこからくるか分からない。油断してしまっていた。シオンはすぐに影膜を
カーネストはベルベルクを担ぐように持ち、振り回す勢いで影膜を切り伏せた。豪風と轟音が一帯を静寂へと追いやる。
「これが、聖剣の威力……!」
その圧倒的な破壊力を目の前にして、シオンは正直ビビった。その瞬間、彼の気は緩み、武装も
「しまっ――」
「……!」
カーネストの表情はまるで獣を狩るものだった。大きく口角を上げ、とても楽しそうに笑っている。内心、ぞっとした。こんなにも狩ることを楽しむ「
「いったい、どっちが化け物なんだか……!」
この距離では避けきれない。あぁ、長いような短いような人生だったなと走馬灯が彼の脳内を
「そんな!」
(ごめん、シリウス……!)
覚悟を決めて目をつむる。そのタイミングを見計らっていたのか、彼が目をつむった瞬間にカーネストは聖剣を振り下ろした。
だが、その攻撃は寸でのところで止められる。
「……っっ、ぐふっ」
カーネストは盛大に血を吹き出した。なぜそのような状況になったのか、彼自身もすぐには分からなかっただろう。
「――自分の力に溺れるからだぜ、大佐殿」
それはシリウスだった。
シリウスの『
家族を守るためだった。仕方のない事だった。
確実に仕留めたと思ったので、シリウスは一気に胸に突き刺した『月光花』を抜く。血が周囲に飛び散った。それと同時にカーネストの体も崩れる。
使用者の力が消えたからだろうか、ベルベルクは
「シ、シリウス……!」
「怪我は無いか、シオン?」
「はい。それよりもその姿は?」
「ん? あぁ、マリーに手伝ってもらった。……どうせまた一時的な物だろう。少々、
「そう、ですか」
シオンは少し残念そうに肩身を落とした。
「まぁ、いいじゃないか。お前はもう少し熱くなり過ぎないよう気を付けなければな」
「……はい」
戦いの全てが完結したと思ったのも束の間だった。シリウスの後ろから、鈍い
「カーネスト。もう動くな。死ぬぞ」
「げほっ……。吸血鬼の分際で、
今にも消えようとしている命を目の前にしてシオンは何も言えなくなった。自分で何もできなかった悔しさが
「最期に聞きたい。私の腕は、どこだ?」
「…………誰、が……言うものか……」
「ほう……」
シリウスはうっすらと目を細め、怒りのこもった視線をカーネストに向けた。
「では今すぐ死ね。貴様に用などない」
そう言ってシリウスは月光花を上へかざした。その刀を首の上へと持っていき、あとは振り下ろすだけだった。
「さらばだ、人間」
シリウスは勢いよく刀を振り下ろした。
だが、間一髪のところで、それは失敗に終わる。
攻撃を止めたのは――マリーだった。
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