6話 僕のヒーロー
「うおおおお!」
ひとり、人間がシリウスに攻撃を仕掛ける。しかし、紙一重というところでひらりとかわされてしまう。彼の攻撃は実に
シリウスは刀を軽く人間の頭上へと振りかざし、そして何も感じていないような冷ややかな目で人間を斬り伏せた。
「ぎゃああああ!」
「身の程知らずめ。この『ラスト・ブラッド』に歯向かえばどうなるのかなど、教会で習っただろうに」
「う、うぐぅううう! 化物……!」
「……」
僕はこの状況を、何故だか楽しんでいた。心がとても
――笑って、る?
血に塗れた美しい銀の髪。頬に垂れた人間の血。ペロリとそれを舐める。なんだか、先ほどまで僕を優しく包んでくれた彼がそこにはもういないように感じて。
恐ろしく彼に恐怖した。同時に、興奮した。この人はこんな力を持っているのにずっと嫌われて続けている。なんで、そんなに強く生きられるのだろうか。その姿を
「……悲しい人だな、あんたは」
ぽつりと呟いたその言葉。僕は彼に何を求めているのだろうか。
「……」
目が、合った。今の聞かれてたのかな……。もしかして怒られる? そう思って反射的に目を伏せる。しかし、何もされない。目を開けた。何か違う。僕に向けられたそれは狂気じみた目ではなく、まるで――
――まるで、僕を通して誰かを僕と重ね合わせてみているような――。
だが、次の言葉は僕の予想を超えていた。
敵を斬り伏せたシリウスが刀を納めてこちらへやってきた。
「怪我は、無いか?」
「え、あ、うん。大丈夫」
「そうか。それはよかった」
「……うん」
正直、彼が僕を心配してくれるなんて、思ってもいなかった。
だから、何も言い返せなかった。だって、とても悲しげな表情で安心するんだから。これじゃあ僕が悪いみたいじゃないか。まあ、この際どうだっていいけど。
だってこの人が今日から僕の『親代わり』になってくれるんだから。
それだけで僕の心はウキウキとした。
「僕は迷わないよ、シリウス」
「ん?」
僕はデュラハンの誇りを、影をシリウスのために使うと決めた。そうすればきっと『誇り』を忘れずにこの先も生きていけるから。僕は、すぅっと息を吸い込んで、ゆっくりと吐いた。そして穏やかな顔で僕はシリウスの方を向く。
「なんでもないよ。……行こ?」
「そうか」
うん。だから安心して、僕を頼ってよ。今だけは休んでて。僕が敵を倒してあげるから。
僕のヒーロー。
僕だけの、王様。絶対に守ってみせる。
――たとえ、何が敵であろうとも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます