7話 内戦
それからというもの、リータスベルではちょっとした戦争が勃発していた。戦争になったきっかけというのがまあ、どうでもいいようなことから始まって。
「この土地は我々、悪魔のものだ。貴様たち吸血鬼の土地ではない。去れ」
この言葉を聞いて、私は何も感じなかったが、他の吸血鬼がカッとなったようで。そう言った内戦が最近は増えてきている。ローズはどうしているだろうか。最後に会ったのは確か五年前だったな。まさか来てはいないよな……。私は気が気でなかった。
そんなどうでもいいこと(私的にはどうでもよくはない)を考えながら敵をなぎ倒して行くと、ふと、違和感を覚えた。
――なんだ? 何かがおかしい。
周りを見渡す。あ。違和感の正体が分かった。
私は月光花を持ち、振り回しながらこの場所から近い高台を目指す。
「ヴォオオオオッ」
「邪魔だ!」
「グォオッッ」
目の前に次々現れる悪魔を斬り倒していく。変な声が辺り一帯で響く。ようやく高台に着いた。私は息を切らしながら、その高台から戦争を見渡す。すると、その違和感の正体が段々私の中で明らかになっていく。
悪魔の気配数が少ない。
リータスベルにおいて、悪魔と吸血鬼の割合が七対三と、悪魔の方が圧倒的に数が多い。しかし、現在は吸血鬼の気配数の方が多い。なぜだ? これは可笑しい。そんな短期間に悪魔が倒されるか? それはない。
「一体、リータスベルで何が起きている……?」
「シリウス様!」
「……シトリー!」
この戦場において、目の保養ともいうべきシトリーが少し傷つきながらも私の元へやってきた。腐っても
「どうした?」
「それが、悪魔たちが急に隊を引き始めて」
「なんだって?」
そのせいだろうか? それが原因か?
否。それだけじゃないはずだ。
「それだけじゃないだろう」
「え? なに? 聞こえない!」
ドドドドッ、と悪魔や吸血鬼たちの戦う怒号が飛び交っているので、そりゃそうだと思った。
「シトリー! お前は今からフォルカスと合流して人間界を調べてきてくれ!」
「どうしてー!?」
「なんだか嫌な予感がする! 悪魔たちの数が減っている気がするんだ!」
「それと人間界と、どう関係があるのさ!」
「直感だ!」
自分で言っていて悲しくなってきた。
「とりあえず頼んだぞ!」
「解りましたー!」
シトリーはこう返事をするとすぐさま後退していく奴らとは違う方向へ走っていった。シトリーが無事に走っていくのを見送ると、私は下へ降りた。すでにそこは、もぬけの殻だった。さら地となったその場所で私は考えた。――あれ……?
「最近、研究で来るはずの人間が……いない?」
思えば最近、研究員の人間たちがこのリータスベルに来ていない。つい五年前までは研究員の派遣がまだ多かった。だがここ最近は、からっきしだ。
「……ロンドンでも、何かが起きている?」
その考えに辿り着いたとき、私は一気に顔から血の気が引いて行ったのが分かった。
――ローズが危ない……!
脳よりも先に、私の足は人間界の方へと向かっていた。
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