第2話

『チコちゃんに叱られる!』が4年目に突入する。5歳児という想定で、着ぐるみをまとったチコちゃんがゲストに質問を繰り出し、答えられないと「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱る。


この質問が盲点をついていて面白い。例えば「大人になるとあっという間に一年が過ぎるのはなぜ?」とチコちゃんが聞く。この答えがなかなかシャレていて「人生にトキメキがなくなるから」。そして“時間学”の大学教授が解説してくれる。


5歳児らしからぬ大人びた受け答えも、そしてチコちゃんの表情がCG加工で多彩に変化するのが面白い。


しかし、そんなチコちゃんに勝るとも劣らないのは我らが“ソウちゃん”ことジャーナリストの田原総一朗、まもなく88歳である。


番組の事前会議でも、放送本番でも、分からないことは何でも聞く。直接かかってくる電話でも質問してくる。


いつだったか、私が温泉に入っている時に電話がかかってきており、お湯からあがって折り返すと突然質問された。

「ポンペオが北朝鮮に行かなくなったのはなぜ?」


湯上りの汗が、冷や汗に代わった瞬間だ。

「北朝鮮が核放棄を進めてないからですかね」と答えるのが精一杯だった。


ソウちゃんの質問は、なぜかいつも答えにくい。実にストレートだからだろう。


『朝まで生テレビ』のパネリストや『激論!クロスファイア』のゲストたちも、そんなソウちゃんの素朴な質問に、用意していた模範解答は通じない。


時々、ゲストが「田原さんもお分かりですが・・・」とか「釈迦に説法ですが・・・」などと前置きすると「全然わからない。僕は頭悪いから最初から教えて!」とソウちゃんは言う。


私が『チコちゃんに叱られる!』のプロデューサーだったら、ソウちゃんをゲストに呼ぶ。番組の進行は例えばこんな感じだ。


チコ:ねぇねぇ、岡●~、この中で、質問するのが一番得意な、舌鋒鋭い大人ってだ~れ?

岡●:それはソウちゃんや~。ソウちゃん以外おらへん。


チコ:ねぇねぇ、ソウちゃん。あっちこっちで口喧嘩してるわね。

田原:喧嘩じゃないよ、議論だよ。

チコ:喧嘩かと思ってたわ・・・それにしても、どうして大人は喧嘩ばかりするの?

田原:違う意見を尊重しないからかな。

チコ:じゃぁ、どうして戦争はなくならないの?

田原:チコちゃんはどう思う?

チコ:あら放送始まって以来初の“逆質問”?・・・そうね~「大人は戦争が好きだから~」

田原:ボーっと生きてんじゃねえよ!

チコ:私の決め台詞も使わないでくれる?・・・とってもやりにくいわ~ソウちゃん。

田原:それじゃ、今度、僕の番組で、続きをやろう、「どうして戦争はなくならないか」

チコ:続きも何も、まだこっちの番組が終わってないんだけど。

田原:こんな難しい問題、10分、15分じゃ無理。絶対に無理!僕の番組でやろう!!

チコ:だれ?ソウちゃんをゲストに呼んだの・・・でもチコは5歳だから『朝生』はダメよ。出るなら『激論!』ね。

田原:それじゃあね、プロデューサーからチコちゃんに電話させるから。

チコ:知らない男の人の電話には出ません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

田原総一朗よ永遠なれ @mame3166

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る