第3話 ボロボロの洋館

 うわ~広~い!!めっちゃ広いじゃん!!!!泳いでみたい!!!!

「すげぇ!!!!ここで泳ぎてぇや!!!!」

「やめろ、ここは温泉だ。公共施設だからな??」

「いいじゃんかよ、小西はうるせぇんだよ。生徒会だからって、威張るなよ」

「何?!」

「うわ、お前も暴れるなよ!!」


「「「・・・・・・・・・」」」

 男子ってうるさいなぁ。

「うるさいねぇ」

「ホント。航志も切れたら為義みたいなもんよ」

「そんなもんね」

「私、もっと静かな環境を想像してたのですが、壁の向こうの人たちで台無しですね」

 でも、やっぱり高級リゾートホテルのような(あ、実際そうか)広~くて、しかも貸切のお風呂って最高でしょ!!露天風呂もあるらしいし・・・・・ああ、もう最高!!


 体を洗い終えると、私と未空は競争するみたいに、湯船に飛び込んだ。

 ジャボーン!!

「うるさいですよ。静かにエレガントに湯につかりたいのに・・・・・」

 な、何で私たちに愚痴るの?!

「うぷっ?」

 急に、お湯がはねたと思えば、やっぱり犯人は未空か!

「やったな?」

 バッシャーン!!

「うげっ」

「まだだー☆」

 そう言って、未空に私は飛びかかった。

 ドボーン!!!!

「本当にうるさいですよ、私、一人で露天風呂にいますね」

「はーい!」

 よし、これで思う存分遊びまわれるぞ!!!!(良い子はマネしないでね♡)


 いいお湯でした~!めっちゃサッパリした~というよりは、すごいVIPの気分になりました~!!

「お~、みんな上がってきたから、食事にしようか?」

 あ、聖奈子パパだ。

「お帰りなさい!」

「えっ?あ、ただいま」

 驚いた顔をしたが、すぐにいつもの柔らかい笑顔を向けてくれた。


「それじゃあ、夜は僕オススメのハンバーガーショップへ案内しよう」

「Yay!」

「イキマショウ!ボク、ハンバーガー、ダイスキデス」


 というわけで、夜のニューヨークをブラブラと歩いていたわけだけど、それはもう・・・・・灯りの都と言っていいんじゃないか?と思うほど、街の光が幻想的だった。

「ここが、僕のオススメ、『ミスター・ビックリバーガー』さ」

 見たところ、とても雰囲気の良さそうなところだ。実際に入っても、とても快適だった。

「美味し~」

「美味いな」

 このグルメなお二人はどうでしょーか?(グルメじゃなくて大食いか?)

 パクッ

 私は、チキンバーガーを口にする。続いて、てりやきバーガー。

「お、美味しい!!!!こんなにおいしいバーガー初めてなんですけど?!」

 ただ、普通に美味しくて、大食いコンビと同じくらい爆食してしまった、高宮花帆でした。


 ホテルへ帰って、カギを開けるとそこには、私を包む神秘的な空間が広がる。そう、超オシャレでエレガントで気持ちいベッドだ~!!

 ボフッ

 早速、ベッドにダイブする。

「いやぁ、神様でしょ!!」

「最高ですね」

「聖奈子は、いつもこんなのじゃないの?」

「とんでもない、私は普通の庶民と一緒です。言い方とか、パパの勤め先とかからそう思われるかもしれませんが、それほど莫大な収入を得てるわけじゃないんですよ?」

「そうなんだ、意外だね」

「そうですか?」

 今回の旅で、親友たちの新たな一面を見つけることができた気がした。でも、まだまだ旅行は続くぞー!エリア51はもう忘れよう!!今は精一杯遊ぼう!!


 夜——それは、一体何時だったっけ?

 男子たちが(いや、為義が)なんか騒ぎ出したんだよね。

「なあ、みんな。俺、ニューヨークの街をちょっと散歩してきたい。いいか?」

「やめろ」

「何でだ!!良いだろ、一人で外出」

「お前、頭悪いから心配だ」

「そんな問題かよ!!」

 何を思ったのか、為義が散歩に行きたいと言い出した。実際の真意は、後から知ることになるんだけど。


「ねえ、男子うるさい」

 私は思い切って言った。

「ああ、すまん。話、聞いてたか?」

「うん、聞いてた」

「花帆、今から行かないか?」

「行きたいっちゃ行きたいけど・・・・・」

「いいよ」

「え?!」

 いいよって言ったのは、私じゃない。未空でも、聖奈子でも、大佑でも、当然航志でもない。

「行ってきなよ。マークを付き添わせるから」

 聖奈子パパだった。聖奈子パパが一番言っちゃダメなんじゃ・・・・・

「っしゃ!!!!」

「良かったねー」

 大佑は、乗り気ではないのか、棒読みで言った。


 フンフフーンンフフーン♬

 ついつい、鼻歌を刻みながら私は進む。

「ニューヨークノヨルハ、トッテモキレイダヨ。ボクモ、コンナニオソイジカンニハ、ミニイッテナインダ」

 というわけで、早速バスに乗った。本当は散歩のつもりだったが、バスで夜景を見て回ることにしたという。

「うわぁ~、キレ~!」

「さすがはNYだな」

「最高の気分だ」

 ニューヨークの真の夜は、光の世界だった。カラフルな色が飛び交う、宝石箱のような世界——


 を想像していたはずだったが、それは無くなった。

「ツイデニ、スコシカイモノシテカラカエルヨ」

「「「え~??」」」

 私、未空、為義が同時に言った。

「アシタノアサゴハンダヨ。ツキアッテナ」

 そのまま、ホテルとは反対方向にハンドルを切って、コンビニへ向かった。


 買い物が終わり、森が近いコンビニから、離れようとした時。

「え、どこ行ってるの?」

「アレ?ハンドルガキカナイ!!」

「うわあ!!森に入ってってるよ!!」

「マズい!」

 私たちは何かに引き寄せられるように、森へ入っていってしまった。


 やっと、バスの暴走が止まり(実は、パンクで)、バスから出てきた私たち。もう、目がクラクラだよ。

「スマホもダメだ・・・・・なんてこった」

「あ!!ねえ・・・・・あれ、何だ?」

 大佑が声を出した。

 何やら、建物が奥の方に立っている。

「なんか、怖いな、あの屋敷」

「不気味です。帰りましょう」

「コッチ、コッチダ。ハ、コッチダ」

 マークの声がした。みんなは、そっちへついていく。

「ハヤクコイ!ミンナ、オソイゾ!」

 マークの声を追って、6人はひたすら前進した。


 しばらく、歩いたがバスは見えない。いや、むしろ森の中に入ってきた気がする。これ、ちょっとヤバいんじゃないの?屋敷みたいな建物がだんだん近づいてきてるんだけど・・・・・。

「Good evening everyone. Thank you for visiting us. I am very happy to have a new challenger・・・・・」

 って、なんか男の人出た~~~!!!!

 男性は、丸メガネを付けていて、髭を生やしていない。20代前半と見える。ハットをかぶっていて、伯爵のような格好だった。

「ちょっと待ってください。あなたは誰ですか?あと、何を言ってるか分かりません」

 聖奈子が英語で言った。

 すると、彼はスマホとマイクを取り出した。

「それは、申し訳ありませんでした。翻訳機越しで伝えますね。みなさん、ようこそやってきてくれました。新しい挑戦者を迎えることができて光栄です」

 スマホ越しで、翻訳された声が聞こえた。



「こちらは、あなた方を招く使い、アンサーバッグ。名前は、ルパン。この鳥はアメリカで語られる都市伝説で、自分の仲間の声をまね、森で迷わせると言われています。もっとも、うちのルパンは、挑戦者を引き寄せるためなのですが」

「へぇ・・・・・」

「それでは、洋館に案内しましょう」


 というわけで、洋館の中に入ってみた。中に、マークが待っていた。

「ミンナ!ヨカッタ!キミタチモコノトリニヤラレタノカイ?」

「そうなんだよ。おかげでこんな目に遭った」

 洋館の中は、外側と同じくらいのボロだった。今すぐにつぶれてもいいのではと思った。

「この洋館は、13階建てです」

「え?!嘘!・・・・・あ、ごめんなさい」

 ついつい、口にしちゃった!でも、こんなボロさで13階もあるってすごいよね・・・・・。

「花帆」

「絵?航志?何よ、急に」

「これ見ろ」

 航志が指した先には、ポスターが貼ってあった。怪物が描いてある絵で、その中心にも、英語が描かれてあった。


THE Monster mansion怪物屋敷

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