第1話 夏のアメリカ旅行
改めまして、私の名前は
ほら、こうやって友達にこんなお話して怖がらせることがしばしば。いや、それが日常。
「おい、お調子者。その本を閉じろ。家庭科のエコバッグの続きは出来たのか?」
そう言って、背の高くてしっかり者の彼は、私の図鑑をパタッと閉じた。
「あ、ひどいよ!!って・・・・・あ、忘れてた!!」
キーンコーンカーンコーン
慌てて、裁縫セットを取って、家庭科室に飛び込もうと思った時には遅かった。
「ほら見ろ、ちょっとはそっち方面のこと考えろ」
そう私に注意してきたメガネっ子の彼は、
しっかり者の生徒会副会長で、真面目過ぎるからちょっと嫌われることも。でも、顔が良いからモテモテなんだよ!
で、彼が私の“怪”の話に怒るのはそれだけが理由じゃないんだ。彼自身が怖いもの大っ嫌いだから!!夏祭りのお化け屋敷なんか絶対いけないやつだもんね。
昼休み――ウィンウィンウィンウィン
私は都市伝説図鑑を隣に、泣きながらミシンを動かしているっていう・・・・・またみんなを震え上がらせるつもりだったのに!あ、悪趣味のつもりはないよ?
「ほら、高宮さん!!よそ見をしない!!あなたが一番遅いんですよ?」
「はいーっ!!!!」
おばあちゃん先生がビシッと言ってきた。そこによそ見した瞬間、ミシン針にかすってしまいました・・・・・。
いつも通り、私たちは家に帰ってランドセルを置いて、校庭に集まった。
いつものメンバーっていうのは・・・・・私、花帆と航志、
「みなさん、私、お父さんからあるツアーに招待されたのですよ」
上品な感じのお嬢様、聖奈子が言った。
「ツアーってなんだ?」
特に何もない平凡な元気っ子、大佑が聞いた。
「アメリカに大リーグを見に行くんじゃねぇのか?それか、スペインにサッカーか?」
学校では、スポーツ万能で有名な男、為義が言った。
「ああ、そうなんです。アメリカなんですよ。ただ、野球は見ないんです」
「何だ!行かせろよ!!」
「はいはい、聞いてみますよ」
「ひとまず、何しに行くの?」
「実はですね、私のパパがアメリカに出張なのですよ。その時に、現地の人が貸切飛行機、出来てくれることになってですね。席が空いてるからいつもの6人を連れて行ってやろうってことになったようなのですよ」
「そうなんだ・・・・・」
静かな感じの少女、未空が言った。
「日付は夏休み中の8月2日から、8月10日まで。みなさん、行きますか?」
「行くに決まってんだろ!!大リーグ、絶対見に行ってやる!!」
目に炎があるのではないかという勢いで為義が言った。
「それじゃあ、僕も行くよ」
大佑が言った。大佑が行くと言ったのを皮切りに、未空と私も賛成にした。あとは、航志だ。
「航志さんはどうなのですか?」
「本当にいいのか?親がいいっていうかもわからん」
「その点は心配ないです、ママがちゃんと言ってくれてます。みんなの両親は良いらしいですよ」
「行く!!!!!!」
ビックリ!!聖奈子が言った瞬間、航志は為義よりも大きな声で叫んだ。
「それでは、決まりですね」
「おう!!!!」
みんな、それぞれ、行きたい場所を調べていた。為義はニューヨーク・ヤンキースの試合、大佑はフロリダのエバーグレーズ国立公園、未空は自由の女神、聖奈子はエンパイアステートビル。
みんな、それぞれの性に合った場所を選んでいるらしい。
ニューヨークに行きたいところが固まっているのが都合がいい。
「私は・・・・・」
アメリカにある都市伝説が載ってそうな図鑑を大きな本棚から取り出す。
ふんふん・・・・・やはり、私が行きたいと思っていたところが№1だったようだ。航志はもう決まったのかな?航志は博物館とか言いそうだよね・・・・・。
『トゥルルルル・・・・・トゥルルルル・・・・・もしもし、花帆?行きたい場所、決まりましたか?』
聖奈子の声だ。
「うん、そうなんだ。私が行きたいところは・・・・・エリア51!!!!」
『え?!エリア51って・・・・・』
「そうそう、あそこ!!!!
『今、調べてますよ』
聖奈子、それお笑いなの?やめてよ、全くもう。
「私が説明するよ。エリア51ってのは、アメリカのネバタ州にある、アメリカ空軍の基地の一地区なの。様々な秘密事項があってね。さらに、基地周辺でUFOとか宇宙人みたいなのの目撃情報が相次いでいるから、基地に秘密で墜落したUFOを運んでいるんじゃないかっていうものが・・・・・」
『へぇ、面白そうですね!言ってみたい!!パパに話してみます』
やった!!聖奈子も賛成してくれた!!って、あのお嬢様がホラースポットに行きたいっていうのすごい。なんか意外・・・・・。
私は、電話を切るとカレンダーをめくった。今日は7月28日。もう夏休みだ。1,2,3,4,5・・・・・5日だ!!
ウーウーウーウー
ワクワクの気持ちを一転、恐怖に陥れたのはその音だった。
――何だろう?
カーテンを開けると、小さな光がはるか遠くの星へ消えていくのが見えた。
時はどんどん過ぎる。私の心臓の鼓動はどんどん高くなる!!!!
都市伝説図鑑を2冊ほど入れ、着替え、スマホ、水筒、財布・・・・・何よりも必要なものは、サバイバルグッズだよね!!万能ナイフ、懐中電灯、発煙筒、ミニライター、毛布、携帯電源・・・・・これは、全部エリア51で起こるなにかに備えるグッズなのだ!!
やりすぎって思われれるかもしれないけど、宇宙人と戦うことになるかもしれないんだから、これくらい!
ピーンポーン
待ち遠しかったインターホンがついになった。
「はいはいはいはいはいーっ!!!!」
バン!!!!
ドアを勢いよく開ける。と、同時に・・・・・
「グアアッ!!!!」
悲鳴が聞こえた。
「花帆・・・・・お前ってやつは・・・・・!」
こ、この声は・・・・・
ヌッとドアから出てきたのは顔、手足を真っ赤っかにしたメガネ航志だった。
「待ちやがれ!!!!!!」
イヤ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!
バス、電車と乗り継いで、やっと空港に着いた。こ、これから初めての海外旅行、アメリカに行けるんだ。ドキドキとハートがドキンドキンしている。
「おはよう、花帆、聖奈子」
未空が笑顔で言った。この子、これからまた暑いところに行くってのに、すでに真っ黒に日焼けしている。いつも色白の未空もかわいいけど、黒もありかも?
「やあ、おはよう」
「あ、パパ」
すごく良いスタイルで、男前な顔の人がやってきた。
それと一緒に、おっきくて、ごっつい体をしたおじさんがやってきた。
「Good morning everyone.」
「このお方が、今回案内してくれる、ニューヨーク本部のアレックスさんだ」
「グッドモーニング!」
カタコトの英語で挨拶をしたのは、航志だった。
「すっげぇ!!この鉄の塊が空に浮くのか!!」
「おい、為義、飛行機の中で騒ぐな」
「いや、良いんだよ。この飛行機には僕たちだけだからね」
「ほら~」
「そう言うことじゃねぇだろ!!」
為義と航志が何やらもめていた。
「それじゃあ、説明するね。飛行機が空に浮かぶのは翼の形にあるの。上の方は膨らんでいて、下は直線。風を受けると、物体を上に向かわせる、揚力という力が生まれるの。それに、前に進む推力、下へ落ちようとする重力、後ろに下がろうとする抗力。それが上手いこと吊り合うから、飛行機が浮かぶんだ・・・・・聞いてない!!」
これを説明するために書いたノートと、イラストを指さしながら話していた未空の話は、難しくて誰も聞いていなかった。航志や聖奈子でさえも。
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