闇の中

僕はパンツ1枚の姿で、ビショップの装備を持ってきてくれるのを部屋で待っていた。


ビショップの1番の強みは、死んだ人間を生き返らせる事だろう。


だから僕だけは死ぬわけにはいけなかった。


ヒールの魔法陣も使えて、その魔法陣にいる間はHPがじわじわ増えていくという代物だ。


もちろんオールヒールも出来、鑑定も出来る夢のような職だ。


「エット君買ってきたよー」


アリンが装備を持ってきてくれた。


「ありがとー」


最下級の装備だけど、着てみると少しだけ威厳に満ちあふれる。


しかし転職したばかりなのでレベルは1に戻ってしまっている。


なので5階で経験値稼ぎが必要だ。アリンもそこは察してくれていたみたいで、


「今日は5階で周回しましょう!」


異議を唱える人も無く、今日も5階で狩りを続けた。


2時間ほど狩って疲れが見えてきた頃だ。


ズーン…ズウン……


「巨大な足音、これ何?」


「レアボスの巨大オークだ。気を付けろよ」


角から出てくると、ダンジョンギリギリの身長のオークがこん棒を持って姿を現した。


と、いきなり敵は走りだしパーティーにタックルをしてきた!全員が吹っ飛ぶ。


そして僕めがけて、握りしめた両手を上にあげ、そのまま振り落とした。


僕は即死してしまったのだ。


パーティーの心の声が残響まじりに聞こえる


(全然役にたたないな…)


(期待してただけに残念だわ…)


違う!違うんだ僕はまだやれる、やれるんだ!




死んだ瞬間、僕はまたアパートの中で目を覚ました。


なぜ前世に戻ってくるのか…。


だが帰り方を知ってる僕は、麦茶を飲んでから、再び紐の輪っかに頭を通した。


これで帰れる。


足場を蹴って、紐が首に絞めつけられる。


7分経って死亡したが、そこには光など無く、延々と闇だけしか訪れなかった…。

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