5階のシビアなイベント

僕らは今5階で、イベントに参加しようと移動中だ。


「ちょっとシビアなイベントよ。『敵を知り、己を知らない』とクリアできないイベントだから気を付けて。


僕らに緊張感が走る。どんなイベントなんだろうか。


程なく大きな広場に辿り着いた。真ん中だけ少し床が浮いている。


「あの床が浮いてる場所がスイッチになってますから、皆さんは己と戦ってください」


「己?自分と戦うってどういう事?」


「そのままの意味ですわ。敵影が現れますが、それは同じスキルを持った己自身…」


「‼」


「ここは『カッティングエッジ団長の私から行くわ!』」


アリンは いの一番に名乗りでた。アリンが中央のボタンに入ると、敵影が現れた!


アリンは敵より先に首をはねるつもりで飛び掛かった。が、初弾はかわされ敵のナイフを自身のナイフでかわす。


折を見てアリンは敵の首をはねた!


勝利したアリンはレベルが5も上昇した。さすがイベントは経験値が高い。勝利したアリンは、ラックを中心にスキルを上げた。


僕は自信がまるでなかった。攻撃スキルもないし、この杖で『しばきあい』するしかなかった。そして敵もヒール持ちだからたまらない。


他のメンバーは続々と成功し、レベルを上げていた。ナターシャと侍だけはレベルが上がらなかった。すでにレベルが高いからだろう。


とうとう最後に僕の出番がきた。もう長期戦でのぞむ他ない。思いっきり床を踏みしめた。敵影が現れる。


持っている安物の杖で敵の腹に突きを食らわせた。敵はすぐ自分にヒールをかける。


これはMPが枯渇するまでの長期戦にならざるを得ない。


「エット君がんばれー」


アリンの声が聞こえてくる。


敵が杖で攻撃してくるので、それを避けながら再びこちらの杖を相手の腹に突きをする。同じ箇所に攻撃すれば、より相手に効くんじゃないかと思い同じ箇所を重点的に攻撃する。敵はヒールでまた回復する。


40分後───────────


2人ともキッコウ状態が続いていた。2人ともゼイゼイ息を切らしている。


仕方なく僕は唯一の攻撃魔法のスキルを今ここで割り振り、相手に投げつけた。まばゆい光とともに敵影が消えてゆく。


なんとか死闘の末、勝利を勝ち取った。レベルが3上がったのでビショップ用に割り振る。



「ふわ~あ…見てて眠くなりましたわ。今日はもう帰りましょう」


「もっとエット君を褒めましょうよ!」


「さっさと攻撃魔法を取ればよかった話ですわ」


ピピンが魔法陣を出し、皆それぞれ入ってゆく。


「やっぱりナターシャはかんさわるわ」


ギルドのバーカウンターでアリンは酔っ払っていた。


僕は相変わらずコーラを注文して、隣に座っていた。


「アリンはもうダンジョンでの振舞いは把握してたと思うけど。鉄のハートが必要なんだよ。」


「それは分かってるけど、どうもナターシャが気にいらない」


「でも大事な戦力だよ」


「そこなのよね~、ビールおかわり!」


アリンはまたもや泥酔するまでビールを飲み続けた。


大丈夫かなと毎回思う僕だったが、何とかいつもベッドには辿り着いてるようだった。

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