手紙
青虫
第1話
もう春ですね。
書き出しだけで何時間も悩んだんだ。本当に。
突然手紙なんて、きっと驚いていると思います。まずは、僕が君に手紙を書いている理由を話さないとね。
四月になったら僕らは別々のクラスになるし、卒業したら、もっと離れ離れになりますね。
(お互い受験に成功する前提で書いているけど、僕らならきっと大丈夫だと思います)
僕はとても寂しい気持ちでいっぱいで、ここ数日、君からのメールに返事をできないでいます。ごめん。
春休みが始まったというのに、なんだかあまり楽しくないのです。
小説を既に二冊読み終わりました。君はまた、読まないくせにあらすじを聞いてくるのでしょうか。
実はいつもそれが少し嬉しくて、少し申し訳ないです。
部活は相変わらず大変ですか? なんて、白々しいね。メールを読んだので知っています。君なら推薦合格は間違いないだろうけど、怪我のことが少し心配です。
なぜ手紙を書いているのか説明になっていないって、思っている頃かな。
僕にとっては相当に勇気がいることなので、なかなか本題に入れません。
さて。深呼吸も終わった。
もうすぐ別々のクラスになって、来年には遠く離れ離れで、僕はそれが本当に悲しいです。
俺もだ、と言ってくれるかもしれませんが、違うのです。
君が好きです。
友達としてではありません。
手を繋ぎたいし、キスをしたいし、セックスをしたいです。
片想いはそれなりに辛かったけど、来年にはもうそれすらできないのだと思うと、今すぐにでも君に抱きついて無理やりキスをしてしまいそうです。僕のことを引っ込み思案だとか奥手だとかいつも笑うけど、そんな僕が、君に対しては気持ちを抑えられなくなりそうなのです。
ここまで書いて、おかしなことに、涙が出てきました。
失恋を味わうのは一度でいいのにね。
明日こそは君のメールに返事をして、買い物に付き合う約束にOKと言います。
本屋にも寄っていいかな。新しい参考書が欲しいんだ。
便箋に文字を書くなんてものすごく久しぶりです。
でも、おかげでずいぶんすっきりしました。
これはちゃんと、破って捨てるから安心して。
じゃあ、明日。
手紙 青虫 @aomusi_aqtrain
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます