後始末

翌日、お父様とルイが「隠し事」について教えてくれました。



お父様はサイモンの家に対して、婚約破棄の慰謝料を請求していました。目が飛び出るほどの金額な上、サイモン自身の財産から支払わせる約束を取り付けていました。


「我が家の愛娘を傷つけた罪は償ってもらわないといけないだろう?彼自身の財産から支払わせるから、向こうの家門にはほとんど痛手はない。向こうはあっさり了承したよ」


ニコニコと私に告げるお父様に、私はそうですか、としか言えませんでした。

サイモンを殺す勢いで怒っていたものね。慰謝料で済むのなら平和的解決と言えるでしょう。




ルイはサイモンの父に、息子と縁を切らなければ帝国の貴族と商売が出来ないようにすると話したようです。

パーティー参加前にそこまでしていたなんて驚きです。いつの間に向こうの家について調べていたのでしょうか。


「他人を侮辱するような家と繋がりを持つのは、帝国貴族にとっても損失ですので」


ルイはさらっと言ってのけましたが、私のためにしてくれたのだと思うと嬉しさがこみ上げました。





ですが二人の話をまとめると……


「つまりサイモンは、絶縁されて貴族としての信用を失った上に、私への慰謝料を稼がなくてはならないってことですね」


「「まあ、そういうことに……」」


お父様とルイは、お互いが何をしたか知らなかったようです。

二人とも、サイモンへの制裁が思ったより重くなったことに罪悪感を抱いてしまったかしら?


「ルイもなかなかやるな。これでようやく溜飲が下がったよ。慰謝料だけでは甘いと思っていたんだ」


「伯爵こそやりますね。僕も絶縁だけでは寛大すぎると思っていたんですよ」


……あらあら、杞憂でしたね。

二人って考え方とか行動力が似ているわ。敵に回したくないタイプです。


「私もお二人の話を聞いて、スッキリしました。慰謝料を頂いたらパーティーでも開こうかしら」


「それは名案だな」


「ぜひ私も招待してくださいね」


なにはともあれ、これ以上隠し事はないようで私も一安心です。


サイモンの家は確か弟がいたはずだから、サイモン抜きでもどうにかなるでしょう。

サイモン自身については……どうでも良いわ。せいぜい私への慰謝料稼ぎを頑張っていただきたいものね。

そういえば、イレーネさんはどうなるのかしら?まあ、どうでも良いです。サイモンと添い遂げるのも良し、誰か別の人と結婚するのも良しです。私の関係ないところで好きすれば良いでしょう。





「お父様、ルイ、私は今回のことで少し性格が悪くなったかもしれませんが、強くなれました。良い機会だったのだと思います。お二人には感謝しかありませんわ。本当にありがとうございます。これから見る目を養って、結婚してくれる人を探します」


そう言ってお礼をすると、ルイが真剣な顔をして私のもとに跪きました。


「でしたら私と結婚しませんか?私ならお嬢様を悲しませたりしません。あいつよりもマシな男ですよ」


そう言って私の手の甲に口づけをしました。


「え?えと……お願いします」


突然のことで少し固まってしまいましたが、ルイに添い遂げるのは素敵なことのように思い、気がついたら口が勝手に了承していました。


「これでシランの結婚問題も解決だな。我が娘ながら良い選択をしたと思うよ。ルイ、シランをよろしく頼むね」


「もちろんです、伯爵。これ以上なく幸せにしますよ」




こうして私はルイと結婚することになったのです。

サイモンに婚約破棄をされた時は人生が終わってしまったかのような感覚を味わいましたが、そのおかげでこんなにも素敵な人と巡り会えたのです。

人生とは何が起こるか分かりませんね。




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