イレーネの結末 ※イレーネ視点

どういうこと!?どうしてあの女がサイモンよりも良い男を連れているのよ!私の今までの努力は何だったの?

パーティーであの女に会ったら思い切り見下してやろうと思っていたのに……





「シランさん?お久しぶり。あら、随分とお身体が細くなったのね。サイモンに婚約破棄されたのがそんなにショックだったの?可哀想にねぇ。……っ!隣の方はどなた?お見かけしない顔だけど」


あの女が連れていた男は、見たこともない美形の男だった。


帝国の公爵ですって?このパーティーの賓客?どうやって手に入れたのかしら……私より醜いのに!

素敵な方だったから紹介してもらおうと思ったのに、あの女、完全に調子に乗っていたわ。


「あなた達には縁のない人よ。公衆の面前で品性のない会話をする人達にはご紹介できません」


品性がないですって?私の顔の方が品性があるでしょうに。

……そうだわ、あの女なんか通さなくても、直接お近づきになれば良いのよ。


シランと公爵様が離れたので、なぜか少し焦っているサイモンを連れて彼のもとに挨拶に行くと、彼は私達を一瞥して冷たい声でこう言ったの。


「さっきの言葉が理解できなかったのか?君たちとは話すことは何もない」


「ですが公爵……少しだけでもお話を」


情けない声を出すサイモンが見ていられなくて、私が助け舟を出してあげたのよ。


「公爵様、サイモンの家は帝国の貴族ともお付き合いがあるんですの。ですから、シランさんなんかよりお役に立てると思いますわ。彼女……世間知らずのお嬢様ですから」


そう言うと公爵様の眼光が鋭くなり、なぜかお怒りになっていたわ。


「この期に及んでまだ彼女を侮辱するのか?本当に下劣だな。おい、サイモンとか言ったな?この女を黙らせろ。これ以上余計なことを言えば、帝国の貴族は全て、お前の家との取引を中断するだろう」


「も、申し訳ありません。ほらイレーネも謝れ!」


嫌よ、どうして私が謝らなくちゃいけないの?意味が分からないわ。

黙っていると、サイモンは私の頭を無理やり押さえつけて頭を下げさせた。


「何するのよ!?」


「いいから、頭を下げろ!俺の家がつぶれたらどうしてくれるんだ!」


私とサイモンが言い合っていると、公爵様はため息をついてサイモンに命令したの。


「シランに誠心誠意謝罪をして許してもらえたら、今回のことは不問にしてやる。それまで私に話しかけるな」


そう言って立ち去ってしまった。どうして公爵様はシランなんかを庇うの?

あの女より私の方が魅力的なはず。公爵様もそれが分かれば、私のことを好きになってくれるわ。……いいえ、好きにさせてみせる!だってサイモンなんかよりずっと権力があるし、裕福に違いないもの!


そうよ、さっきはサイモンがいたから、サイモンの女だと思われたのね。一人で話しかければ公爵様も私に惚れてくれる。


「くそっ!イレーネ、お前のせいだ!しばらく俺についてくるな!」


うるさい男ね、いいわ、私は公爵様に相手をしてもらうから。





「公爵様!もう少しお話ししませんか?先ほどはサイモンが取り乱してしまい、申し訳ありません。」


「……君は言葉が理解できないのか?話しかけるな」


「え……?ど、どうして……私はシランさんより美しいでしょう?あの女よりもあなたのパートナーに相応しいでしょう?!」


「お前みたいな無礼でみっともない女が、シランより美しい訳ないだろう?周囲をよく見てみろ。お前がどんな目で見られているか分かるだろ?」


え、周囲……?


「なんだあの娘、さっきから大声ではしたない」

「あの子、さっき別の男とも揉めてたわね。一体なんなのかしら」

「帝国の貴族にあんな態度……我が国の恥だな」


「……なによ、どうして私が……私は……」


こんなはずじゃなかった……こんなはずじゃ……。

私はただ、裕福な男と結婚して幸せになりたいだけなのに、そんな目で見ないでよ!


こんなのは違う……違うわ!


もう……サイモンで良い、私を幸せにして!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る