再会と小さなお返し
パーティー当日、ルイと一緒に会場に入ったのですが、緊張で立ちすくんでしまいました。
しばらく社交界から離れていたせいなのか、ルイがいるせいなのか、皆から注目されている気がします。
「お嬢様、大丈夫ですか?何か飲み物でも貰ってきましょうか?」
「大丈夫よ。ただ、パーティーにはきっとあの人も来ているでしょう?立ち直ったつもりですけれど、会うのは少し怖いの」
俯いて不安を口にすると、ルイは私の腰に手を回し、私を抱き寄せました。
距離がぐっと近づいたけれど、嫌な気はしない。何だかドキドキするわ。
「あなたが自信を失う必要はありません。私がサポートしてあげますから、安心してください」
「ありがとう……ルイ、隣にいてね」
ルイの目を見ていると、不思議と心が落ち着きます。
うん、大丈夫よ。後ろめたい事なんてない。何か言われても私は正々堂々としていれば良いのだから。
知人たちへの挨拶を済ませてゆったりと過ごしていると、後ろから声をかけられました。
「シラン?本当に君か?……随分変わったから分からなかった……ははっ、僕と別れてようやく痩せるなんて、少しは反省したのか?」
「シランさん?お久しぶり。あら、随分とお身体が細くなったのね。サイモンに婚約破棄されたのがそんなにショックだったの?可哀想にねぇ。……っ!隣の方はどなた?お見かけしない顔だけど」
「あ……」
先ほど決意を固めたはずなのに、いざ対面すると言葉が出てきません。
思わず、ルイの腕をぎゅっと掴んで俯きました。
ルイは私の方を向いて微笑みながら、彼らの前へ出て私を庇いました。
「礼を欠く人間に名乗る名前はありません。シラン、行きましょう。国王に挨拶がありますから」
「え?ええと、私達は一般の招待客なので、お会いできないかと……」
「私は賓客として招待されているのですよ。申し訳ありません、これも言ってませんでしたね。さあ、行きましょう」
ルイの態度に呆気にとられていた二人は、賓客という言葉に反応し、私たちを慌てて引き留めました。
「え?賓客ですって?そんな方とシランさんがどうして……」
「シラン、一体どんなコネを使ったんだ……!?その方は一体誰なんだ?」
二人は立ち去ろうとしていた私たちの前に立ちふさがりました。
その様子にルイはため息をつくと、私に耳打ちをしてきました。
「え?……『あ、あなた達には縁のない人よ。公衆の面前で品性のない会話をする人達にはご紹介できません』」
ルイに言われた通りの言葉を二人に向けて復唱すると、二人は真っ赤になって怒り出しました。
「なんですって?」
「お前、調子に乗るなよ!」
周囲の人たちが振り向く程の大声で二人が喚いている隙に、ルイは私を連れて足早にその場を離れました。
今、私ったら二人に対してすごいことを言った気がするわ……。
「お嬢様、素直すぎます。まさか本当に言うと思いませんでしたよ。笑いを堪えるのが難しかったです」
急に足を止めてルイが笑いながら言いました。
「ルイが言えというから思わず……でも、なんだかスッキリしたわ。あの二人のあんな表情、初めて見たわ」
「次何か言われたら、自分の言葉で返すと良いですよ。もっとスッキリしますから」
「そうね……ふふっ、そう思うと、怖くなくなるわ」
私はもっと思ったことを口に出しても良いのかもしれないわ。
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