イレーネの思惑 ※イレーネ視点

「ああ、彼女とは婚約を破棄したんだ。前から合わないと思っていて……だからもう俺は自由なんだ。これでいつでもイレーネとデート出来る」


ついにここまで来たわ!ようやくサイモンを手に入れられるのね!





サイモンとは幼なじみとして育ち、いつも一緒にいた。正直、タイプではないけれど、彼の家は私の家と違って裕福だった。


同じ伯爵家なのに、どうしてこんなにも差があるのかしら?

幼い頃は嫉妬心に溢れていたけれど、ある時気づいたの。私が彼と結婚すれば良いんだと。


そう考えるようになってから、嫉妬することはなくなった。


……それなのに、彼はあの女を連れてきて、こう言ったの。


「彼女はシラン、僕の婚約者だ。イレーネも仲良くしてやってくれ」


心のどこかでは分かっていた。我が家とサイモンの家とでは釣り合わないと。

でも、おっとりとして、裕福そうで、なんの苦労もしていなさそうなあの女を見た時、抑えていた気持ちが爆発してしまった。


サイモンと結婚するのは私!裕福な家庭を手に入れるのは私!あの女に譲ってやるものですか!





だから、サイモンとあの女が別れるように仕向けることにしたの。


「ねえ、シランさんって、細くて美しいわね。あなたもそんなところに惚れたんでしょう?」


「え?うーん……親が決めた婚約者だから考えたことなかったが、確かにそうかもな」


「私も綺麗になったら、私にも惚れてくれる?……なんてね」


「な、何を言っているんだ……」


化粧を覚えて、少しセクシーな格好でサイモンの目をじっと見つめて言うと、彼の心がグラついているのが分かった。

単純な男ね。こんな男に頼らないといけないなんて腹が立つけれど、もうそんなこと構わないわ。




「シランさん、最近ふくよかになってきたわね。幸せ太りってやつかしら?羨ましいわ。私は最近痩せてきちゃって……落ち込むことが多いから」


「何かあったのか?」


「気にしないで。……あなたが遠くに行ってしまう気がして、少し寂しいだけなの」


「イレーネ……」


少しずつサイモンとの距離を縮めていって、彼の心を引き寄せる。

そして街に出かけた時、偶然あの女を見つけたから思い切って仕掛けることにした。


腕を組んでサイモンを路地裏に連れ込み、口づけをして、彼に囁いたの。


「可哀想なサイモン、シランさんみたいに太った女を横に置かなければならないなんて……。私だったらあなたに恥をかかせたりしないのに。……私が慰めてあげる」


あの女が追いかけてきて、こっそり見ているのには気づいていたわ。ショックを受けている顔が快感だった!





その後はあっという間だった。

サイモンとあの女は揉めたらしく、すぐに婚約破棄になった。


婚約破棄をしてからのサイモンは私に夢中で、欲しい物は何でも買ってくれた。

これこそ私が求めていたものだわ!あぁ、なんて素晴らしいの!


明日は大きなパーティーがあるらしく、サイモンのパートナーとして出席することになった。

私の家柄では参加できないパーティーなのに、サイモンのおかげね。


彼にドレスやアクセサリーを買ってもらったことだし、明日が楽しみだわ。



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