ルイの正体
「な、何を言っているの?執事にエスコートさせるだなんて、そんな……。確かにルイがいてくれたら嬉しいけれど」
私が慌てていると、お父様が不思議そうな顔をしてこちらを見ました。
「良いアイディアじゃないか、私からも是非頼むよ。君がエスコートしてくれるなら安心だ。……あぁそうか、シランにはまだ伝えていなかったかな?」
「えぇ、言うタイミングもありませんでしたし」
何故お父様は賛成しているの?ちょっと、二人で会話を進めないで。
「あの、話が見えてこないのですが……ルイとお父様は何を言っているの?」
二人の顔を交互に見て訴えると、ルイがおもむろに立ち上がり丁寧なお辞儀をしました。
「お嬢様、黙っていて申し訳ありません。実は……私はエルバン帝国の公爵なのです」
え?エルバン帝国の公爵?ルイは隣国の貴族だったの?どうしてそんな人が我が家の執事をやっているのよ?
驚きと戸惑いで固まっている私を見て、お父様が口を開きました。
「今、エルバン帝国が王位争いをしているのは知っているね。彼は王位継承者を正式に承認する立場にあるのだが、帝国内では彼を利用しようという人が多くいる。だから王位継承者が決まるまで、他国に身を潜めていたんだよ。ルイの家とは昔から仕事で取引があってね、我が家で匿うことにしたんだ」
「私を含めて五人、承認権を持つ者達がおりますが、皆、他国で身の安全を確保しておりました。先日、ようやく王位継承者が決まりましたので、承認の書類を送りつけたばかりなんです。……やっと身分を明かせました」
ルイ、若いのにそんなにすごい立場の人だったのね。というよりお父様、そういう大切なことは最初に言ってほしかったわ!
「私、本当に執事だと思っていて……失礼な態度をとって申し訳ありませんでした」
今までの自分の行動を振り返り、公爵様になんてことをさせていたのだろうと慌てて謝罪しました。
「身分を偽っていたのは私ですから、気になさらないでください。もう執事ではいられませんが……私のこと嫌いになりましたか?」
私の様子を窺っているルイの不安そうな顔を見ていると、失礼だけれど公爵様には見えないわ。私は、私の知っているルイを信じることにしましょう。
「そんなことありません。驚きましたけれど、ルイはルイですもの。あ、ルイ様とお呼びしなければなりませんね」
私が笑いかけると、ルイも安心したように微笑みました。
「ルイのままで結構ですよ。お嬢様、改めて……私と一緒にパーティーへ行っていただけますか?」
そうだった、パーティーの話の途中だったわね……。不安はあるけれど、ルイがエスコートしてくれるなら大丈夫な気がする。
隣国の公爵なら問題ないでしょうし。
「はい、よろしくお願いします」
私の返事を聞いて、ルイもお父様も嬉しそうでした。
パーティーにはサイモンも来るのでしょうね……ルイがいてくれるけれど、少し憂鬱だわ。
ひっそりとため息をついていると、ルイが細長い箱を手渡してきました。
「お嬢様、パーティー当日はこれをつけてください。私からのプレゼントです」
プレゼント?何かしら?
箱を開けると、中にはネックレスが入っていました。
これ、街で見かけたルビーのネックレス……。いつの間に用意したの?
「ありがとうございます。あの時のネックレス、買ってくださったのですね」
「お嬢様に似合うと言ったでしょう?プレゼントならつけてくださると思いまして。これからは、見ているだけで十分なんて言わないでくださいね。ほら、つけて差し上げます」
ルイは笑いながら、私にネックレスをつけました。本当にルイには敵わないわ。
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