第一章 君を守りたい

薄暗い空間を歩き続ける。この中にたしかに光ある。でも、それがどこから漏れているのかわからない。足場は道なのかわからない。

ニンニクのきつい匂いが鼻腔をつつく。

思考が渦巻いて脳からかすかな電流を感じる。

体が認識できない。でも、たしかにここに自分は存在している。


ふと、視界が暗くなった。体が動かなくなった。

闇に倒れ込む。深く深く海のように落ちていく。

どこまでもそこのない穴に。


ゴツンとおでこに衝撃が走る。

痛い。

どこか、懐かしい。闇の世界に光が纏われる。

どこかから声が聞こえる。

おーい。おーい。おーい。

何も見えなかったはずの世界が色づき始める。

形がはっきり見える。


「おい、起きろ。授業中だぞ。」

周りからは笑い声が聞こえる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る